時代の変遷、日本製パソコンは何処へ?

岡本 裕明

東芝と富士通、それにソニーから独立したVAIOが統合に向けた交渉に入るようです。正直、うーん、という感じでしょうか?統合にはそれなりに大きな労力がつきものですが、それに対する見返りはちょっと小さすぎる気がします。今回の統合案は日本型ネガティブ統合である点は指摘しておきたいと思います。

私の世代はE-mailが主体であります。この良さはキーボードから打ちやすく、長い文章もあまり苦なく打てるということでしょう。事実、ビジネスに関係するやり取りは今でも添付ファイルをつけやすいE-mailが主体なのですが、それ以外の個人的なやり取りや簡単なビジネス交信はE-mailからスマホ経由のテキストに代わってしまいました。特に出張や休暇などで動き回るときはパソコンへのアクセスは限定されるもののスマホはずっと持ち続けている人がほとんどでしょう。あるいは外に出ているとき、待ち合わせしているときでも相手といとも簡単にやり取りできます。その上、国際電話を含め、LINEなどを使えばボイスでのやり取りも無料で簡単です。つまり、その利便性だけ見ればスマホはもはやノートブックが勝負できないレベルに達していると言えます。

デスクトップ、ノート、スマホ、更にタブレットと様々なデバイスが出てきたわけですが、実際のところはタブレットが思った以上に苦戦しています。一時は年間2億数千万台が売れていたものが今年は1億8000万台に届かないレベルになっています。多分、来年以降も各社工夫は凝らすと思いますが、何か特別のアイディアがなければタブレットは中途半端な存在として市場から支持は少なくなると思います。

では、ノートパソコンはダメなのか、と言えば私の思う限り成長性はないが、安定した需要は期待できるとみています。では売り上げが伸びない点ですが、門戸外の単なるユーザーとしての意見を言わせて頂ければ性能競争が一巡したことで数年ごとに買い替える必要がないこと、ウィンドウズ10が無料でアップグレードできたこと、パソコンの耐久性が伸びたこと(メモリー不足や処理スピードなどの問題も生じない)、そしてスマホの補完性でしょうか。

一方で業務ではデスクトップかノートが今だ王道であります。理由は業務の作業効率性、画面サイズ、打ちやすさなどでしょう。また、データやソフトをハードディスクに置かず、クラウドにすることでどこからでもアクセスできるメリットは大きいでしょう。各作業拠点にパソコンを置いておけば良いだけで持ち運びの不便さはもはや解消されてきました。つまり、移動中のスマホとじっくり作業するノートパソコンというすみわけです。

今や、ノートパソコン市場はかなり成熟産業化したような気がします。その中で3つのメーカーの市場占有率は日経によると東芝、富士通、VAIOはそれぞれ2.9%、1.3%、0.04%です。全部足しても4.2%で世界ランクは7位で変わらず。トップ3のレノボ、HP、デルはそれぞれ20-14%の占有率でその背中は遥かかなたであります。

ここから類推すると北米的な発想なら三社統合後に二番手グループである台湾のエイスースかエイサーないし、トップグループのHPやデルとの売却、合弁しか道はない気がします。(アップルの選択肢はないでしょう。)つまり今回の統合は新たなる道を見出すための準備作業に見えます。そう考えるとさっさと身の処し方を決めたNECのレノボとの協業は正しかったことになります。

ここは推測ですが、東芝が一連の問題で家電を中心としたリストラを断行することでかつての「ノートパソコンの東芝」という評価を過去の栄光と割り切れたことが大きかった気がします。ただ、逆に言えば非常に消極的理由によるリストラだとも言えます。

このあたりは日本企業の一番悪いところなのですが、本当にどうにもならなくなるまで「もしかしたら」の奇跡を信じてしまう日本の見切りの悪さとも言えそうです。一番怖いのはこの統合で日本国内の市場に限れば3割を超えトップになることで悪いガラパゴス化が進まなければよいと思っています。

では今日はこのあたりで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 12月7日付より