マクドナルドの株式放出で何か変わるのだろうか?

岡本 裕明

アメリカのマクドナルドが所有する日本マクドナルドの株式の一部を放出するそうです。本家マクドナルドは現在日本マクドナルドの49.9%の株式を所有していますが、そのうちの15-33%をファンドや商社などに売却する方針とされます。苦境のマクドナルドはいよいよ最終手段に出たのでしょうか?

まず、このニュースで気をつけなくてはいけないのはマクドナルドが日本マクドナルドを手放すわけではないことです。持ち分を減らすだけで日本のマックはあくまでもアメリカの本家の傘下に置かれます。仮に本家が49.99%のうちの49%を第三者に売ったとしても本家と日本の間に運営等に関する契約が存在する限りにおいて本家マックにはロイヤルティを支払う仕組みで、マックの看板が突然青いWマークになるわけでもありません。

欧米では所有と運営契約は全く別物でこのような契約はごく普通であり、運営者のノウハウを提供することによるロイヤルティフィーやマネージメントフィーと称するものは「親元」がしっかり確保できるようになっています。

今回の株式放出は本家マックが日本マックから得ていた配当金が将来的に減る可能性(減配)を見越し、株価が高いうちに放出するという戦略と思われます。特に日本マックは個人株主が株主優待目的で所有するケースが高い銘柄です。株主には年二回、持ち株数に応じて食事券が配布されます。例えば現在なら27万円ちょっとで100株購入すればマックのバーガー、サイドメニュー、ドリンクが6回楽しめるバウチャーが1冊もらえます。また、現金配当もあります。

本家マックに於いて日本市場は4段階のランクのうち、全く期待されないカテゴリーに属しています。期待されていないのですから運営に力も入らないでしょう。カサノバさんが何をどうやっても市場はそっぽを向いたっきりでもはや放置プレーにすら思えてきます。

ではなぜ、日本のマックだけがこれだけ不振なのか、ですが、アメリカ流マネージメントを押し付けるスタイルがワークしなくなったこと、もう一つはサラ カサノバさんに経営の風向きを変えられる期待が全くない、ということです。

日本のおしゃれなエリアでファーストフードが無くなる傾向があります。特に流行に敏感な女性が主導する街ではファーストフードが「ダサい」代名詞となりつつあります。ファーストフードは極端な話、駅の立ち食いソバと同様、今すぐさっさと腹を満たすというのが基本コンセプトです。ところが女性は話をしたり雰囲気を楽しむことが食べること同様重要なエレメントであります。あるいは提供されるフードがどれ位おいしそうに見えるかも重要です。ところが紙に包まれたバーガー、使い捨てカップのソフトドリンクでは味もそっけもないのです。このトレンド変化にマックは対応できなかったのです。あの牛丼屋ですらちゃんと陶器のどんぶりに入って席までサービスしてもらえる違いを指摘した人がいたでしょうか?

原宿からファーストフードが消えつつあり、その代名詞であるマックも閉店することが決定したのはこのストーリーを裏付けています。女子高生も今やマックじゃだめだということでしょう。この点においてはマックの経営陣に発想の転換が必要だったということになりそうです。

では、もう一点のサラ カサノバさんではだめだったのか、ですが、正直、私は彼女が着任する時点でダメだと申し上げました。理由はカサノバさんの個人能力の問題ではありません。日本の大衆の代表的存在となったマックについて市場とのコミュニケーションが期待できなかったからです。そして想像通りダメでした。

これは日本市場の特殊性と私は考えております。応援するにしてもバッシングするにしても空気を作るのはトップの人望、対話能力、風評、評価などです。恐ろしいことに日本はマスコミ、メディアという化け物が前面に立ちます。更にそれに扇動されやすいほぼ単一の国民性が横たわります。一旦敵に回したら「ごめんなさい」をして辞めるまで叩き続ける傾向が強くあります。北米のように敗者復活戦もあまりありません。一度✖がつくと消せない特殊な世界がそこにあります。

この市場に於いて原田体制から窮地に陥っていた日本マックを救えるのはやはり日本人の顔だったと思っています。そういう意味では本家マックは日本市場の特殊性を甘く見た気がします。

さて、本家が売り出すであろう日本マックの株式に投資しようとするのはどんな会社か、はたまた飲食系の企業が加わった場合、本家のマネージメントにどのような交渉を挑むのか、興味津々であります。本家が小うるさいことを言わない投資家を選べばマックの沈下は止まらず、口うるさい会社が出てくれば復活戦もあり得るとみています。

では今日はこのあたりで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 12月23日付より