国会議員は忙しい?国会議員の仕事って何だっけ?

育児休暇が必要なほどに「国会議員は忙しい仕事なのか?」という疑問

国会議員の宮崎さんが「国会議員は「忙しい」という主張をされており、だから「育児休暇で休ませてくれ」という論理を展開されています。

国会議員に時間的自由があるとの指摘について」(宮崎謙介議員)

もちろん、ほぼすべての国会議員が異常に過密なスケジュールで生活していることは存じています。宮崎さんのおっしゃる通りで気持ちは分かります。しかし、上記の記事内容のような弁明は「国会議員」としての仕事と「政治家個人」としての仕事の区別がついていない、という勘違いから生まれるものです。

そして、現役の国会議員が上記のような混同をされていることは、自民党全体の所属国会議員への教育機能が働いていないことを意味しています。議員は現実論だけでなく理屈で自分の活動を整理できる最低限の知識も必要です。

そこで、下記の以前の記事でも触れさせてもらいましたが、まずは「国会議員」としての仕事の定義を明確にするべきです。その上で、本当に議会を休むほど忙しいのかを検証すべきです。

国会議員に育児休暇は必要か?(12月24日拙稿)

自民党所属の国会議員の東京滞在時のスケジュールを組み立てると下記の通り

まず、東京滞在時(火~木・週3日)の自民党国会議員の主なスケジュールは下記の通り。

①朝7~9時:部会・自民党の内部勉強会(参加できない場合は秘書の代理出席でメモを取ることも可)
②朝9時~夕方5時:本会議・委員会出席(その他、党会合、官僚のレク、業界団体会合出席、面談など)
③夕方5時以降:各種勉強会や飲み会などの梯子

これに対して、宮崎さんも

「国会議員の仕事を本会議や委員会のみと考えた場合には平均で週3日の9時~17時でしょう。これだけを仕事だと思ったら楽な仕事ですよね。」

ということで、仕事が②のみであれば楽だ、と明言されています。そして、これが国会議員の正規の仕事のミニマムということになります。

部会への出席、陳情処理・根回し、夜の会合への出席は政治家個人の仕事

同記事中には

「まず、与党の仕事は上記のことの他に、朝の部会というものがあります。そこで政策や法律についての議論をします。そして、ここで了承を得られないとその法律は国会で審議されない仕組みになっています。この部会というものが平日はほぼ毎朝8時から行われています。その他にも様々な勉強会がありそこに出席するために予定を調整することも難しいくらいです。」

とされています。これは①の仕事であり、いわゆる政党の仕事(党務)に属するものであり、政治家個人の政党人としての仕事です。もちろん、部会→政調会→総務会という自民党内部での法律に対する事前審査を行う重要なプロセスの一部であり、自民党が有する与党・霞が関一体の政策立案システムの根幹を担うものです。

しかし、これはあくまで政党人としての仕事なので、むしろ必要ならば責任が持てる同僚議員に代わってもらえば良いだけです。自分の所属していない部会に秘書が代理出席してメモを取ったり、資料をもらったりすることもザラです。部会でキラリと光る発言を行うと勉強している議員として周囲から一目置かれますが、党内出世を考えなければ国会議員が無理して参加する必要はありません。ご自身の状況と政党の間で調整をつければ解決します。

また、

「夜は企業や団体やNPOや同僚議員、役所・・・etcの皆様と交流を深め、実際に世の中では何が問題になっているのか、その本音を探るために時間を費やします。」

とありますが、これは③に属する仕事なので、やはり政治家個人の政治活動です。情報収集を行うことは全ての業界で出世していくためには必要なことであり、別に政治家に限った話ではありません。しかし、これは国会議員としての正規の仕事ではないので自主的にお休みすれば良いだけです。

最後に、

「地元の陳情です。例えば、地域のある施設が老朽化していて困っているので国の補助金をもらえないだろうか。地元の観光を盛んにしたいので何か良い知恵はないだろうか。地域の子供たちに宇宙飛行士の話を聞かせてあげたいのだけどどうしたらいいだろうか。などなど、様々な問い合わせや要望が寄せられるのです。だから、私たちの携帯はなりっぱなしです。」

「週末は朝から晩まで地元の地域行事に顔を出します。小選挙区になってからの文化らしいのですがこれをしないと地元の有権者から、顔が見えないと指摘されることがあります。」

は完全に再選に向けた政治活動なので、むしろ、これらの個人の政治活動を国会議員の仕事として混同していることは甚だ問題です。

「国会議員」の仕事だけなら「週3日・定時帰宅が可能」、筋を通した主張を展開するべきでは?

たしかに、党務もしなければ情報収集もしないということでは、「政治家としての資質」は疑われるかもしれません。しかし、公職としての国会議員としてのミニマムの仕事は子育てしながらでも十分にこなすことはできます。

国会議員のミニマムの仕事だけなら「育児休暇」を取る必要が無いのに、それすら放棄して育児休暇を取ることはおかしいのではないでしょうか?

実際、国会議員として国会事務所に顔を出していると、「党務」、「会合・飲み会」、「地元活動」が付いて回るので、精神的・身体的に自由な状態でいることができないので全部をシャットダウンしたい、という気持ちは理解できます。しかし、それは国会議員としての最低限の仕事である議会への出席を欠席する理由にはならないはずです。

国会議員の仕事と政治家個人の仕事を明確に分けることは難しいかもしれませんが、国会議員としての正規の職務以外の仕事を停止するために、国会議員の正規の仕事もまとめて停止して良いということにはなりません。

私が本件にこだわっている理由は、国会議員が自ら議会制民主主義の権威を揺るがすことを平気でするようになることは問題だと思うからです。育児休暇に一石投じたいということも理解できますが、だからといって国会に砂をかけるような真似をすることは間違いです。

私たちは育児休暇の議論を行う以前に、「国会議員の仕事は何だっけ?」という問い、つまり議会制民主主義の根幹を大事にする必要があります。

今回の一件から見えてくることは、賛否を論じる議員たちが、風潮に流される議員なのか、筋を通す議員なのか、ということです。私は筋を通す人に国会議員になってほしいと思います。

渡瀬裕哉(ワタセユウヤ)
早稲田大学公共政策研究所地域主権研究センター招聘研究員
東京茶会(Tokyo Tea Party)事務局長、一般社団法人Japan Conservative Union 理事
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