小選挙区制の生んだポピュリズム:『代議制民主主義』



今年夏に衆参ダブル選挙が行なわれることは、永田町ではなかば公然と語られている。安倍首相の究極的な目的は憲法改正だから、軽減税率も老人への給付金バラマキも、すべてダブル選挙で2/3をとるための戦略的ポピュリズムだ。これは小選挙区制がようやく政治に浸透した結果とみることもできよう。

本書もいうように代議制(自由主義)と民主主義は本来、矛盾する制度である。議会は国家権力を制限するために討議する制度だが、民主主義は国民の代表が主権者として権力を行使する制度である。前者の強いのが比例代表制などのコンセンサス型で、後者の強いのが小選挙区制などの多数決型だ。

日本はもともとコンセンサス型の伝統が強いので、小選挙区制で「決まらない政治」を是正する必要もあるが、首相の権力が極度に強くなると、党や国会の頭越しにバラマキ型ポピュリズムで大衆の支持を得ようとする。アベノミクスも、その意味では経済的ポピュリズムだった。

多数決型が極端になると、選挙ですべて勝負がついてしまい、国会の論議は形骸化する。また意思決定が「官邸主導」になると、これまで官僚機構をチェックしてきた財務省が首相の命令に抵抗できず、軽減税率のようなポピュリズムがまかり通ってしまう。

これにどう歯止めをかけるか、という問題意識は本書にはない。特に疑問に感じるのは、著者も指摘する行政国家化についての議論が抜けていることだ。これは行政が専門化するにつれて実務官僚が強い権力をもつ世界的な傾向で、立法も実質的に官僚が行なう貴族政治(アリストクラシー)に近づいている。

国会の代わりにメディアが「第4権力」として行政を監視する役割を期待されているが、軽減税率のように政権が新聞を「買収」すると、このチェックもきかない。だから行政の情報公開や説明責任を強め、審議会や研究会などもネットで公開してメンバーを公募し、官僚をチェックする専門家を政策立案の段階から参加させるべきだ。

本書は古代ギリシャから安倍政権までの歴史を新書版で解説し、各国の制度を網羅的に分類・整理しているので、大学の初等的な教科書としてはいいかもしれないが、視野が狭義の議会制度に限られており、プロの官僚が読んでも新たな知見はほとんど得られないだろう。