【映画評】クリード チャンプを継ぐ男 --- 渡 まち子

クリード
▲ロッキーの「新章」として注目作(公式FBより、アゴラ編集部)

ボクシングのヘビー級チャンピオンだったアポロ・クリードの息子、アドニスは、保険会社の堅実な仕事を辞めてフィラデルフィアへ向かった。今は亡き父と伝説的な戦いを繰り広げた、ロッキー・バルボアに会うためだった。アドニスは老いたロッキーを捜し出すと、トレーナーになってほしいと頼む。最初は、もうボクシング界から引退したからと断るが、アドニスの中にアポロと同じ才能とファイティング・スピリッツを見出したロッキーは、トレーナーを引き受けることを決心する…。

名作ボクシング・ドラマ「ロッキー」シリーズのスピンオフともいえる「クリード チャンプを継ぐ男」は、ロッキーのライバルで親友だったアポロの息子アドニスという、思いもよらない変化球でスタートする。擬似親子のような関係のドラマや、老ロッキーの苦悩、アドニスのロマンスや成長物語も用意して、新しいファンも、往年のファンも納得する作りだ。

ライアン・クーグラー監督はまだ若いが、秀作「フルートベール駅で」でみせた丁寧な演出が光っている。面白いのは、物語の中で不在であるアポロの存在感の大きさだ。鳥を追いかける練習法や星条旗のトランクスなど、心憎いアイテムや演出もたっぷりある。もちろん、ファイトシーンは迫力で、親の七光りと呼ばれたアドニスが驚くべき才能をみせ、次第にスタジアムの観客を味方につける展開は「ロッキー」と同じ。一方で、オマージュをささげながらも、現代ならではの変化もある。病におかされた老ロッキーはもはや、フィラデルデイアの階段を駆け上ることはできなくなったが、ゆっくりと、でも確実に階段をのぼる姿は、穏やかな神話のようだ。新シリーズの続編制作の話もあるとか。世代を超えた熱いファイトに、感動を覚える。

【85点】
(原題「CREED」)
(アメリカ/ライアン・クーグラー監督/シルヴェスター・スタローン、マイケル・B・ジョーダン、テッサ・トンプソン、他)
(擬似親子度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2015年12月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。