荒れる年始市場、予想は困難

年始早々、市場は大荒れの展開でスタートしました。これを書きながら見ているニューヨーク市場もダウが一時450ドル程度下げ、昨年末からの下落に拍車がかかっています。

年始の株価下落は嫌なことを思い出す人も多いと思います。1991年のバブル崩壊あるいは2008年にはリーマンショックの前哨戦とも言える暴落がありました。この年は年初の日経平均15000円台が年後半には7000円に下がってしまいました。特に08年1月4日は前年12月28日比616円安となり、年初8営業日で1800円下げました。妙に気になる嫌なイメージです。

今年の1月4日の東京市場は当初、31日のニューヨークの地合いを引き継いだ程度でしたが、10時に中国からPMI(製造業購買担当者景気指数)の弱々しい数字が伝わり、上海市場の下落スタートと共に円相場が急激に円高に振れていきました。

正に昼前からのあれよあれよという間の1円60銭ほどの円高劇でした。ミセスワタナベも120円を破ったあたりから損失覚悟の売りを出したとみられ、円売りドル買いとみていた個人FX投資家に正月早々のボディーブローとなってしまいました。円高の要因はサウジとイランの外交断絶の意味合いがじわっと伝わってきた結果のような気がします。原油が東京市場で強含みで始まったことでこの問題が何れスポットライトを浴びることは明白でしたが、ニュースが多く、目まぐるしかったというのが正直なところではないでしょうか?

一方で東証マザーズでは指数が上昇して終わっており、日経平均と対照的な結果となっています。特にフィンテック関連の暴騰が続いていますが、個人的には市場に買えるものがなく、しかたなくそこに資金が行ったとみています。よって既に値上がり前の何倍にもなっている一部のフィンテック関連はババ抜きかロシアンルーレット状態だとみて良いでしょう。

さて、個人的にはこの二大ニュース、中東情勢と中国の株価でありますが、根深いのは中東情勢になろうかと思います。それぞれを細かくここで検証するのは無理ですが、個人的に思うポイントはここにきてスンニ派とシーア派の雄が激突するシナリオが出てくるのはやや想定外ではなかったか、という点です。昨年まではテロ、そしてISせん滅を目指して欧米、ロシアが必死にISを攻めていました。一部ではイラクからISの一部地域を奪取したニュースもあり、比較的順調に作戦が進んでいるのではないかとみておりました。

ここにきてサウジがシーア派系指導者を処刑したことで違う切り口が出来てしまいました。サウジのサルマン国王は即位してちょうど1年。それなりに抑えていたものをここで吐き出してくるのでしょうか?同国王は80歳という年齢もあり、つなぎ的な見方もあったと記憶しています。そうだとすれば余計、ビジョンが見えないことにもなります。更にサウジにつられるようにバーレーン、スーダンも国交断絶、アラブ首長国連邦は大使の召還で外交の格下げを実施しました。新年早々に一気にこれだけのことが進んでしまっているのです。

最大の懸念はこの火消役がいない点ではないでしょうか?イランと握手したオバマ大統領の面目は丸つぶれでしょう。この状況を回復するには今のアメリカの力量では厳しい感じがします。欧州の首脳でも見当たりませんし、プーチン大統領でもないでしょう。つまり有効的手段がないまま、状況が悪化する可能性は残っていると思います。

中国については弱いPMIもそうですが、今週かそれに準ずる近日中に上場企業の大株主や経営者による株式売却禁止が解ける見込みであることが大きい気がします。解禁対象の株式価値は20兆円で仮にそのうち10%が市場に出たとしても2兆円、これは上海市場の一日の出来高の15%程度に当たります。一時的に大きな需給悪化の心理的材料となりそうです。ただしこれは時間が経てば解消可能ですので懸念の度合いは小さいと思います。

そういえば中国主導のインドネシア鉄道建設で中国がえげつない要求をインドネシアに要求し、困らせているようです。中国は契約までは良いことを並べ、その後は手のひらを反すのが非常にうまく、それに引っかかってしまうケースは多いものです。中国がインドネシア政府の費用負担なく鉄道を作る訳はないのは分かっているはずです。要は騙されたか、コロコロされたかのどちらかでしょう。日本がいかに正直者かよくわかると思います。同じような中国への不満はアフリカ諸国でも発生しています。AIIBも本当にフライするのか、注目すべきでしょう。

専門家はこの市場状況でそれなりの予想を打ち出そうとしていますが、今の段階では材料不足の上、展開が想定できず予想不能だと思います。私も年初に「シートベルトをしっかりと締めましょう」と申し上げたのは船頭多く殺気立ち、皆ばらばらで我儘になった為に動きが見えづらくなったという意味合いを含めていました。

前途多難のようですね。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 1月5日付より

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。