コンテンツ・デジタル集積特区、CiP宣言3--- 中村 伊知哉

東京港区のベイエリア、竹芝地区にデジタル・コンテンツの街を創る構想、CiP(Contents Innovation Program)。発足に当たっての宣言、その3。CiPが提供する機能について。

3) 4機能のハブ

融合領域の産業と、教育と、文化を生む、コンパクトなクラスターを形成する。かつて◯◯バレー構想と称するプランが注目されたが、竹芝は、谷ではない。空と海である。羽田から都心に着く浜松町の地のりを活かす。海外からのみなさまをデジタルでもてなす。

東京湾に面する広がりを活かす。東京は、海を持つ首都。アメリカも、イギリスも、フランスも、ドイツも、イタリアも、インドも、中国も、韓国も、首都に海はない。東京は、海を活かそう。港と、水辺と、海面とを活かそう。

東京の各地域をつなぐハブになりたい。渋谷、新宿、池袋、秋葉原、銀座、内幸町、汐留、赤坂、六本木。山手線内の各拠点も音楽、ファッション、アニメ、ゲーム、広告、テレビ、さまざまな集積がある。さらに渋谷でも池袋でも、品川でも、再開発が待っている。五輪に向けて開発も進む。みなデジタルがポイントになる。それらをみなつなぐ。
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国内の有力都市をつなぐハブになりたい。コンテンツ特区の札幌、映画・マンガ・アニメ・ゲームが集積する京都、音楽とゲームに強い福岡、国際映画祭を擁する沖縄、その他いろんな町を連結するハブになりたい。

世界の有力都市を結びたい。ボストンや西海岸の大学。ロンドンの研究所やパリのイベント。シンガポールのプロジェクト、ソウルのインキュベーション施設。全てを連結するハブになりたい。

CiPの機能は4つ。研究開発、人材育成、起業支援、ビジネスマッチング。技術を生み出し、人を育てて、それを産業として押し出し、世界にビジネスを広げる。そこから生まれたテーマを研究する。そのサイクルを描きたい。
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開発から育成、産業化までを一気通貫で行う。この一気通貫で日本で成功したモデルの存在は知らないが、だから挑戦する。デジタル分野で研究開発から大きな産業に育ったものはある。軍事技術の研究から発生したインターネットがネットビジネスを生んだ。70年代にMITが開発したゲーム技術が日本のゲーム産業を生んだ。

アメリカは大学が存在感を発揮している。スタンフォード大学はSUNマイクロシステムズを生み、Yahoo!を生み、Googleを生んだ。ハーバード大学の学生がマイクロソフトとfacebookを生んだ。MITからはeInkや$100パソコンが飛び出した。日本も、学に発動させたい。

例はある。1960年、東海大学の開局したFM局がその後のFM東京になった。2008年、大阪大学と慶應義塾大学が産学連携で推進した実験プロジェクトがネットラジオのradikoとなった。こういう事案を数多く生み出したい。

研究開発、人材育成、起業支援、ビジネスマッチングの一気通貫サイクル。とは言えCiPが目指すものは、秩序だったクリーンな場ではない。イメージを描いてみるならば、デジタルのおもちゃ箱のような「MITメディアラボ」と、NPO「CANVAS」による子どもの創作プロジェクト「ワークショップコレクション」と、西海岸の起業コミュニティ「500 startups」と、あらゆる分野の連中が交わるカオスな場である「ニコニコ超会議」。そうした機能をコンパクトに一箇所に集めて、365日動かす。集約と融合による化学反応を期待する。そのような学校、工場、そして広場を作りたい。

CiPは、初音ミクになりたい。初音ミクは3つの要素から成り立っている。まず、ボーカロイドという技術。作詞作曲すれば専属歌手になってくれるというテクノロジー。第2にコンテンツ。16歳、158cm42kgのキャラクターのデザイン。

そして第3は、コミュニティ。ニコニコ動画にみんなが参加して育てあげた。作詞作曲してみた。歌ってみた。演奏してみた。踊ってみた。みんなが自分の能力を持ち寄り、育てた。技術、デザイン、そして参加型コミュニティの総合力が日本の強み。これを活かしたい。
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(つづく)


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2016年1月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。