育休問題で感じる30~40代の社会的リーダーの質

問われているのは「国会議員の育休」ではなく「30代・40代オピニオンリーダーの質」

宮崎謙介議員の育休を巡って、30代・40代のオピニオンリーダーと目される人々が「常識がない」話をされていることは非常に心配だと感じています。本件は単なる育休の話題ではなく、30代・40代オピニオンリーダーの資質に関わるものだと感じています。

駒崎弘樹さん「育休は「評判を落とす」?評判落ちてるのは、自民党幹部のあなた方だ
橋本岳さん「宮崎謙介議員の国会議員育休宣言をめぐる議論について

駒崎弘樹さんの「社会人としての常識」ではなく「ポジショントーク」を貫く態度

駒崎弘樹さんは、国会議員の育休を批判した自民党の幹部を批判していますが、本件については「自民党幹部議員」の主張が99%正しいです。

自民党の国会議員は、全体の奉仕者としての国会議員であると同時に、自民党という組織の人間でもあります。そのため、自民党としては自党のブランドで当選してきた議員に対して党のガバナンスに従うよう求める当然の権利があります。

宮崎議員が自民党の組織に対して何の根回しもなく記者に育休を発表したことは、

「経営幹部の了承無く、社員が勝手にTVの記者会見で自組織にとって重要なことを発表した」

というトンでもない話だと思います。それに対して「国対(党内手続き)を通せ」という当たり前の説教を幹部が述べて何の問題があるのでしょうか?むしろ、幹部議員の言い方はともかく、年配者の人生語りの小言だけで済ませてくれるだけで有り難いと思うべきです。それにも関わらず、当の議員本人は幹部からの小言に対してブログで組織外に向かって文句を述べています。

本件を成功裡に実行するなら党内で事情を説明し、自民党として納得できるメッセージと代替措置を整えた上で、政党・議員としてのPR効果を狙って発表するという当たり前の仕事が抜けています。国会議員の育休の是非は抜きにして、老獪な自民党議員なら選挙のためにプラスなら協力したかもしれません。それが無かったので、幹部議員から国会議員としての仕事量だけなら不要、と思われて苦言を言われているだけでしょう。

駒崎さんはNPO経営者なので同議員が社会人としてトンデモないことをしたことは理解できるはずですが、相変わらずのポジショントークぶりに呆れます。宮崎議員の行動は「父親になる」前に「人の親になる社会人」としての常識を問われるべきものであり、大人の振る舞いが出来ていれば結果も違ったと思います。

橋本岳さんの法律論は「国会議員としての見識」を問われるもの

橋本議員のほうは更に問題が根深いものと感じています。橋本議員の法律論を要約すると、

〇憲法には、国会議員が国会に出席する義務を書いていないため、国会議員の国会出席は権利である
〇法律には、非労働者は対象に含まれないが、法の趣旨を自然に解釈すると職業人としての国会議員も含まれるべき

このダブルスタンダードはあまりに酷いのではないかと思います。せめて、バラバラのエントリーに分けるべきではないのか、と思う次第です。

つまり、憲法に明文化されていない国会議員への要請を無視しながら、法律上明らかに存在しない非労働者の権利を主張する、ことは立法者としての資質が疑われても仕方がないでしょう。

衆議院のHPには、「国会議員は、主権者である国民の信託を受け、全国民を代表して国政の審議に当たる重要な職責を担っています。この職責を果たすため、国会議員の地位には、一定の身分保障が与えられており、法律の定める場合を除いては、国会の会期中は逮捕されず、また、議院で行った演説、討論または表決について、院外で責任を問われません。」

と書いてあります。本件は国会議員としての職責を放棄することの是非が問われているのであり、憲法上の義務や権利の明文規定の有無で本件を論じる不毛な言論は何の意味があるのでしょう。憲法が国会議員の国会出席を明文化していないことは、「学校の先生が生徒に教室で席を立たないように」と諭すことと同じく、社会の通念として「当たり前の話過ぎて書いていないだけのこと」ではないかと思います。

そして、雇用契約で働く義務がある労働者とは異なる「農林漁業者、商店街の店主さん、医師・弁護士など独立専門職など」の育休について語っていますが、これらの人々は仕事を休めば一円にもならないことは当たり前のことだと思っています。私も含めて労働者ではない自営業は仕事・生活の自由を得ているのであり、法律で仕事や私生活の在り方に介入されることに疑問を感じる者も大勢います。

従って、橋本さんの性格の良さは伝わってくるものの、立場によって憲法や法律を無理やり偏向解釈する姿勢は、立法者の基本的なあり方として改めるべきだと思います。

「30代・40代のオピニオンリーダーの質」について今一度問い直すべきなのではないか

上記の2名は名前の知られた社会運動家と国会議員かと思いますが、言論の質が低すぎて議論する余地もない、わけです。50代以上自民党幹部の国会議員らを唸らせるような筋の通った議論が出来る人に若手を代表するオピニオンリーダーになってほしいです。

人間は誰しもがポジショントークで語ることは否めないものです。しかし、同じポジショントークでも社会常識をもう少しだけ踏まえてほしいと思います。有権者は上記のような話は分からないだろうから、いい加減な言論で構わないと思うのであれば更に問題です。感情的に煽りたてたり、中途半端な法律論で煙に巻こうとする態度を改めるべきです。

育児休業に限らず、両人にはオピニオンリーダーとしてまともな言論を世に出すことを期待したいと思います。私たちは自分たちの世代の代表である若手・中堅世代のオピニオンリーダーのクオリティーを今一度問い直すべきでしょう。

渡瀬裕哉(ワタセユウヤ)
早稲田大学公共政策研究所地域主権研究センター招聘研究員
東京茶会(Tokyo Tea Party)事務局長、一般社団法人Japan Conservative Union 理事
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