「世界で最も若者の声を聞かない国」からの脱却へ。若者よ「18歳選挙権」で流行語を取ろう!

日本の若者には世界レベルで活躍して欲しい

最近の20代の活躍はめざましい。代表的なのはフィギュアスケートの羽生結弦(21)だろうか。
今年はオリンピックイヤーという事でスポーツ選手に注目が集まる。卓球の石川佳純(22)、水泳の萩野公介(21)、体操の白井健三(19)、さらに若い世代にも世界ユース選手権で2冠を達成したサニブラウン・ハキーム(16)など、期待される若手選手は多く、日本の若者の世界レベルの活躍に期待するわけだが、同時になぜ政治の世界では、日本の若者はこうした活躍を見せる事ができないのだろうかと悔しい想いをする。日本の若者は、世界の若者に比べてそんなに劣っているのだろうか・・・

2016年は70年ぶりに若い有権者が増える年

成人の日を迎えると「20歳になると選挙権を得る」と話される事が一般的だったが、今年は例年と大きく異なり、成人の日を前にして、新聞各紙も「18歳選挙権」という言葉が並んだ。
筆者自身も新聞各紙の記事に協力し、読売新聞には『今夏参院選 18歳票 各党じわり接近』という18歳選挙権を意識して各政党が若者に接近しているという記事に、若者の声を政策に反映する必要性を、朝日新聞には『「18歳」どう思う? 4象限マップで選んでもらうと…』との記事で、独自のアンケート調査をもとに、若者にとっては社会保障などの世代間格差や就職や非正規雇用をめぐる問題など自分たちにのしかかる問題を解決していくチャンスを無駄にしないで欲しいとコメントした。

多くの日本人にとっては20歳で選挙権を得るのが当たり前のように感じると思うが、世界189ヵ国のうち、実に87.8%の国ではすでに選挙権が18歳から与えられており、G8では日本以外、OECD34ヵ国でも日本と韓国以外のすべての国が18歳に選挙権が与えられている。その韓国すら2005年に公職選挙法を改正し選挙権を19歳に引き下げた。若者の声を聞くという意味では、この国は、明らかに発展途上国と言える状態だったのだ。

こんな日本もようやく動き出し、今夏の参院選挙からは「18歳選挙権」が実現する事になった。
「たかが選挙年齢が2歳下がるだけ」と思う人もいるかもしれないが、日本において選挙権年齢が引き下がるのは、戦後直後の1945年に女性の参政権と共に「25歳以上」から「20歳以上に」引き下げられて以来、70年ぶりの引き下げになる。
大学生であった2000年に選挙権年齢引き下げをめざしNPO法人Rightsを立ち上げた。
当時は「大学生が法改正なんて…」などと同世代からも言われたが、15年かかったものの「若者でも動けば変えられる!」というモデルは示せたのではないかと思っている。
「18歳選挙権」については、今も「若者に政治判断能力があるのか?」などといった声が聞かれる。
ただ、選挙権については、1889年には直接国税15円以上納める25歳以上の男子とされていたものが、1900年には納税額10円以上に、1919年には納税額3円以上にと緩和され、1925年には納税要件がなくなり25歳以上の男子へと普通選挙が認められ、さらに1945年には性別要件も廃止された。
2013年には選挙権のなかった成年被後見人の選挙権も回復し、この事をもって、理論上は能力による選挙権の規制の議論は余地がなくなっている。
さらに世界的にも選挙権は拡大の流れになっており、2007年からオーストリアが国政および地方選挙で「16歳選挙権」を実現しているほか、
ノルウェー、ドイツ、スイス、英国などで、特定の州および市町村選挙での「16歳選挙権」を実施している。
選挙権年齢の引き下げは、投票率にも影響する研究も出されており、16・17歳に投票権が保障されるドイツ・オーストリア・ノルウェーでは、16・17歳の投票率が、18・19歳の投票率を、また、10代の投票率が20代前半のそれを上回る結果が出ている。

若者には「若者が政治を変えた!」という動きを期待したい

「18歳選挙権元年」となる2016年は、是非、日本の若者にも「若者が政治を変えた!」と言われる動きを形にしてもらいたいと思う。
若者参画が最も進むスウェーデンには、若者世代の利益代表組織として、LSU(全国若者協議会)と言われるものが存在する。
スウェーデンでは、若者に関する政策の形成や変更の際には、国と若者が協議する事になっており、2010年にスウェーデン視察に訪れた際、このLSUの代表であった23歳の女性に対する政府側のカウターパートは若者政策担当の大臣が務めると聞いた。この代表は、EUや国連の会合で各国の首脳を前に演説をする事もあるとの話に驚かされた。
日本の若者たちにも、「単に投票に行く」という事だけでなく、「若者の声やアイデアを政策に反映させる」事まで踏み込んでもらいたい。
こうした想いから「18歳選挙権」を実現した後、昨年から若者の声を各政党の政策に反映するためのインフラとしてLSUを意識して「日本若者協議会」を設立、自民党、公明党、維新の党と「日本版ユースパーラメント」を実施した。

被選挙権も18歳にとうったえてはどうか?

2016年の参院選に合わせて提案する政策の柱について、若者には「18歳被選挙権」を掲げてはどうかと提案したい。
この国は、若手政治家も少な過ぎる。
国会議員に占める30歳未満の若手政治家の割合を見ると、ドイツが6.0%、ノルウェー5.6%、スウェーデン5.0%であるのに対し、日本はわずか0.6%しかいない。ドイツとの比較では、約10倍もの差があるのだ。
国政選挙権を16歳に引き下げたオーストリアでは、被選挙権についても18歳まで引き下げた。すでにアメリカでは、2001年にペンシルバニア州マウントカーボン町に18歳の大学生町長が誕生し、2005年にはミシガン州ヒルズデール市に18歳の高校生市長が誕生している。
政治不信が続く中、また世代間格差の是正が政策形成の重大要素となる中で、この国の長期的なビジョンと戦略を考えられる若い政治家についてもどんどん登場してもらいたいと思うのだ。

2016年の流行語は「18歳選挙権」をめざそう!

こうした運動なども含め、2016年、若者には、政治や政策に対する「声」を是非「見える化」させてもらいたい。
医師会や農協など、業界団体の声が政治に反映されやすい背景には、その層がコンクリート化され、「見える化」されている事が「政治力」になると言われている。
今の若者に「コンクリート化」をしろとは言わないが、SNSを含めネットワークを活用する強みを生かし、せめて「コンニャク化」、「コンニャクゼリー化」でもいいので、やんわりとした声の塊をつくり、政治の側へ「見える化」する事を意識していくために、例えば「#18歳選挙権」をつけて、ネット上に「若者の声」を拡散し続けてはどうかと提案したいと思う。
15年間かけて「18歳選挙権」を実現した自称「ミスター18歳選挙権」としては、若者がこうした新たな政治的な動きを創る事で、2016年は「18歳選挙権」が流行語大賞を取る程の活躍を期待したい。

高橋亮平

高橋亮平(たかはし・りょうへい)
中央大学特任准教授、NPO法人Rights代表理事、一般社団法人 生徒会活動支援協会 理事長、千葉市こども若者参画・生徒会活性化アドバイザーなども務める。1976年生まれ。明治大学理工学部卒。26歳で市川市議、34歳で全国最年少自治体部長職として松戸市政策担当官・審議監を務めたほか、全国若手市議会議員の会会長、東京財団研究員等を経て現職。世代間格差問題の是正と持続可能な社会システムへの転換を求め「ワカモノ・マニフェスト」を発表、田原総一朗氏を会長に政策監視NPOであるNPO法人「万年野党」を創設、事務局長を担い「国会議員三ツ星評価」などを発行。AERA「日本を立て直す100人」、米国務省から次世代のリーダーとしてIVプログラムなどに選ばれる。 テレビ朝日「朝まで生テレビ!」、BSフジ「プライムニュース」等、メディアにも出演。著書に『世代間格差ってなんだ』、『20歳からの社会科』、『18歳が政治を変える!』他。株式会社政策工房客員研究員、明治大学世代間政策研究所客員研究員も務める。
twitter: @ryohey7654 facebook: /ryohey7654