生活保護は抜け出すインセンティブがほとんどない

国・自治体が時給400円(最低賃金半分以下)の雇用広げ公設貧困ビジネス推進?ブラック企業支援?」というTwitterまとめがありました。自治体の中に、生活保護費支給額を削減するために、自治体が仕事を作り、生活保護受給者にワークシェアをするというものだそうです。

確かに生活保護は年々受給者も受給世帯も増えています。厚生労働省が最新のデータを発表していますが、平成27年10月現在のデータで「被保護世帯数 1,632,321件」「被保護実人員 2,166,019人」となっています。およそ日本に住む人の59人に1人が生活保護を受けている状況です。

政府としては経済が伸びず、財政再建の観点からも、少しでも社会保障の給付を減らしたいと考えているのは間違いありません。ですので生活保護費が削減できる仕組みなら歓迎なはずで、上記の仕組みも喜ばしく見ているのではないでしょうか(まとめた人は労組関係の方なので、異論があるでしょうが)。

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生活保護から抜け出し最低賃金で働く場合

ただ、生活保護を減らしたいというのはわかりますが、現在もし生活保護をもらっていたとした場合、生活保護から抜け出すインセンティブというのは何でしょうか?何か生活保護から抜けだしたら「いいこと・メリット」があるからこそ、抜けだそうとするものです。しかし日本では生活保護から抜け出すインセンティブはほとんど見当たりません。

例を上げて計算してみます。大阪府では最低賃金が2015年10月より858円になりました。もし858円で160時間働いたとした場合、手取りは137,280円です。きりよく14万円として、ここから社会保険や雇用保険が差し引かれます。およそ2万円として残り12万円です。4万円の家賃の家に住んでいたとした場合、家賃を差し引いて残り8万円になります。

では大阪府の中でも最も生活保護支給額が高い大阪市であればいくら貰えるか?というと、80,820円が支給されます。これは住宅扶助は別で39000円の家賃まで扶助されます。月に160時間働いて8万円、働かないで80,820円の生活保護、比較してもほとんど大差がありません。

つまり働いても働かなくても同じくらいの金額がもらえるのです。もちろん生活保護はこの最低賃金での労働収入を想定して作られているでしょうから、当然かも知れません。しかしこれでは働く気を削いでしまいますし、生活保護を抜けださなくてもいいと考えてもおかしくありません。最低賃金で働いている人からしても、「馬鹿にするな」という気持ちでしょう。

働くことで得をする仕組みが必要

だからといって私は別に「最低賃金を上げろ」ということを言いたいわけではありません。生活保護から抜けだした時、働き始めた時のインセンティブが必要ではないか、と言いたいのです。わかりやすい例でいえば、生活保護を抜けだして働き始めた人には「1年間毎月3万円を支給する」「1年間は社会保険料は支払わなくて良い」というようなものです。これなら働いたほうが圧倒的にお得です。

生活保護が増えてきたことで政府・自治体が費用を削減しようと考えていたこととしては、窓口で給付申請をさせない「水際作戦」などが有名です。増やさないというのも確かに給付費用を減らしますが、それよりも「生活保護をもらうよりも働いたほうが得」という状況を作りだすべきです。現在の日本で生活保護を抜け出すインセンティブとして働いているのは、世間の目くらいのものです。これでは弱すぎます。

もちろん課題はたくさんあると思いますが、本気で減らしたいと思うのであれば水際作戦なんてやらず、必要な人には給付し、働ける人には「働いたほうが得をする」と思わせる事が重要ではないでしょうか。