●成人式って必要?
(出典 産経新聞)
私みたいなお仕事の人は、任期中、「あれをやりました」「これをやりました」とアピールする習性がある。
(実際本当にその人の手柄なのかは怪しいものも圧倒的多数。皆さん、厳しく見つめてあげてください)
しかし私は自虐キャラなので、逆に自分ができなかったことをこの場で懺悔したい。
それは何かというと「成人式の民営化」だ。
私は人と多く接する職業に就き、だいぶ克服できたけどもともと自虐キャラな上に超「非リア」。
なので、「リア充」が集団でうぇーいとしている場所があまり好きではない。
自分の成人式の時も山中湖そばの三島由紀夫文学館に一人旅していた。
雪道を歩き、他に宿泊客のいない旅館にたどりつき、1人で夜を明かすのはまあまあ楽しかった。
そもそも、式典一回やったくらいで各人が大人になったことを自覚するとは思えない。
大人になるスピードには、どうあがいても個人差がある。
式典ですべてをまとめようとすること自体がナンセンスな発想なのだ。
また、「祝辞」と言いながら、実際は「祝う」というよりやたら「説教」めいた、顔も名前もよく知らない偉いさんの話がそもそもつまんねーからざわついているわけだ。
それは壇上で話す偉いさんもプロとして自覚した方が良い。
●DQNポルノ化する成人式
毎年風物詩のように「荒れる新成人」のニュースが流れるけどさ。
みんな眉をひそめつつも言わばバカ発券器的な楽しみをそこに見出しているんじゃないのだろうか。
障がい者などのドキュメンタリーをお涙ちょうだいの「感動ポルノ」だとコメディアン兼ジャーナリストのStella Youngが批判して話題になったけど、成人式も「DQNポルノ」化していませんか?
自分より下のDQNを見て嘲り笑う。今は亡き「ビッ○ダディ」や「目○ドキュ○」の代替物になっていませんか?
こんな有様なんだったら成人式、別に止めてもいいじゃんと昔から普通に思っていた。
なくすのがダメなんだったらあり方を抜本的に変えればいい。
例えば、地元の飲食店を回れるバルチケットを新成人に配って仲良いグループで思い思いに楽しんでもらうとかどうか?
こうすれば地元経済活性化につながるし税をかけずに祝新成人的なイベントが出来てしまう。実際に提案してみたが、実現には至らなかった。
我ながら今でも良いアイデアだと思っているんだけど、天王寺区の場合そもそも成人式は区役所直営のイベントではなく、地元の青少年指導団体との共同による実行委員会形式で実施されていたので、私の一存では決めかねた。
そこで団体の方々といろいろ話をさせていただいたのだが、お話を拝聴する中で私が気付きもしなかった発見が多々あった。
まずは大阪のこんな都市部でも、新成人の未来を応援したいと心から願う中高年の方々が多くいて、そういった方々が連休を潰して30人、40人、ボランティアで式典運営に参加しているという事実。
すごいよね。
自治体によって差はあるんだろうけど、日本の成人式って「役所」がやっているんじゃなくて、実質「地域」がやっているとこも多いってことを皆様に知っていただきたい。
そんな地域のまっすぐな思いに触れた時、「ニーズ合ってないから式典を廃止しましょう」とか「バルイベントに変えましょう」とは軽々に言えなくなった。
イベントの存続適否を検討する上では「やる側(のモチベーション)」と「参加する側(の満足度)」を突き合わせる必要があるけど、少なくとも「やる側」は100点満点。
では、「参加する側」はどうかってことなんだけど、天王寺区では今年新成人の半分が成人式に出席した。
出席率もさることながら、アンケートとかで成人式が新成人に本当に響いたのか?価値があったのか?というとこを聞いてみると、まったく響いてない、価値がないってわけじゃないこともわかってくる。
ただ、昔の同窓生と会えるから満足という声も多く、それならば成人式じゃなくて同窓会で良いのでは?ということにもなる。
なので私としては、成人式は何が何でも必要と言い切る気にはやはりなれない。
しかし少なくとも戦後続いてきた成人式を守り継ごうとする多くの地域住民がいることに敬意を払い、任期中はとりあえず必要最小限の予算は計上してきた。
それでも、いつも式典が終わって入り口前で新成人がたばこを吸ったり酒を飲んだりしていて、ゴミを路上に捨て、それをいそいそと片付ける役所の職員や地域のおじちゃんおばちゃんの姿を見ると何とも言えない切ない気持ちになる。
●新成人 ぜひ自分らでアクションを
新成人のための式典なんだから、新成人の側から提案がでてきて、自分たちで責任もってイベントを回すってなった時こそ、我々は彼らの応援をしてあげたらいいと思う。
こういう新成人主導のイベント運営を押し付けでやってる自治体もあるけど、そうじゃなくてゆくゆくは自発的にそこに向かっていってくれたらなあと願っている。
ロンブーの淳がTwitterで聞いたアンケートは面白かった!やっぱ何らかの形で成人式は必要って若い子は思ってるんだね。ただ、やはりとにかく今のあり方でというこだわりはないみたい。
それなら若い人は自分からアクションしたらいいと思う。
その時こそ、周りの大人が本気で向き合い、応援してくれる時なんじゃないでしょうか。
■水谷翔太 大阪市天王寺区長
早稲田大学卒業後、NHK記者を経て、橋下大阪市長実施の公募に合格し、2012年に史上最年少で天王寺区長就任(当時27歳)。