活動紹介記事。出典:魚沼読売新聞2016年新春号。
日本は、障害者に対する理解が欧米諸国とは異なるといわれます。車椅子用の駐車場やバリアフリーを比較すれば、それはすぐに理解できることでしょう。今回は、社会福祉の位置づけをより鳥瞰するために、ボランティア活動に取組んでいる現役大学生の堂本哲代さん(法政大学文学部英文学科在学中)に話を伺いました。
●ボランティア活動を通じて何を学んだのか
—活動を通じて感じたことはあれば教えてください。
堂本哲代(以下、堂本) 東京都に本部をおく障害者支援団体(橋本久美子会長・橋本龍太郎元総理大臣夫人)が運営する活動に参加しています。障害者と健常者が共同生活をしながらボランティアスピリッツを高める活動です。共同生活をすることで参加者それぞれの良さが理解できお互いの成長も確認できたように思います。
なお、障害者に関する議論は高まりつつあると感じていますが、まだ本質的とはいえません。障害者支援は活動の実践をすることで身につくものです。私を含めて多くの人が中途半端な知識ではなく、きちんとした見識を身につける必要があると思います。正しい見識を身につければ障害者に対する偏見は無くなるように思います。
活動の実践には、障害者との信頼関係の構築が不可欠です。初対面であっても相互に信頼関係を構築することで、自然体で接することができるからです。一方、活動に参加しながらも「~してあげる」という誤った視点から障害者支援をおこなう人もいます。障害者支援の本質は、障害者を弱者として支援することではありません。上から目線ではなく障害者の自立を促しながら対峙しなければいまの環境が変わることもありません。
●本質的なボランティア活動が必要
—いまの障害者を取り巻く環境についてどう思いますか?
堂本 ボランティア活動をしていると「障害者支援、ボランティア活動、そんなの偽善だよね!」と誤った理解をする方がいます。これは障害者支援のテレビ番組に対する批評を見ていればすぐに分かります。
人が人の活動を評価することは難しいことです。問題を直視しながら何もせずに机上の空論を展開するほうがよほど無責任で偽善ではないかと思います。活動の目的や意識は各々異なると思いますが、まずは自身で参加をして問題を直視しなければ実態を客観視することはできません。
多くの人の障害者理解や意識改革の促進が必要ではないかと思います。「必要性はわかるけど自分には関係ないし」という負の意識は誰もが持っているものです。そのことを批判することはできませんが、多くの人が活動に参加することで機運が高まるのではないかと思います。
—最後になにかメッセージがあればお願いします。
堂本 日本では、特別支援学級などで障害者と健常者を明確に分離させている点で、教育者はグレーゾーンの子供たちへの対応に苦戦しているように感じます。教育現場が苦戦を強いられることで障害者支援に抑制をかけてしまうのは勿体無いことです。有識者などがメディアなどでもっと障害者関係のことを発信していってほしいと思います。
—ありがとうございました。
1972年に米国ペンシルバニア州裁判所は「障害の如何を問わず、すべての子供はその能力に応じて教育を受ける権利を有する」(Pennsylvania Association for Retarded Children,PARC判決)と宣言しています。これは、差別的な教育に対する是正を求めたものであり、教育のダンピング(教育の放棄)を招く危険性があることへの警告です。
内閣府の平成26年度障害者雇用状況によれば日本における障害者数は、身体障害者366.3万人(人口千人当たり29人)、知的障害者54.7万人(同4人)、精神障害者320.1万人(同25人)であり、国民の6%が何らかの障害を有するとしています。障害者政策は私たちにとって喫緊の課題でもあるのです。
尾藤克之
経営コンサルタント