アイオワ州党員集会、繰り返された悪夢 --- 安田 佐和子

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アイオワ州党員集会で、悪夢が繰り返された。今度は共和党ではなく、民主党陣営で—。

大豆と豚肉の生産が全米一のアイオワ州で、民主党のクリントン前国務長官VSサンダース・バーモント州上院議員は歴史的な大接戦を演じた。州都デモインなどにある5会場では、党規に沿いコイン投げで勝敗を決める苦肉の策が講じられたという。勝利の女神は、劇コイン投げ全てを制したクリントン候補に微笑んだ。結果は、49.9%対49.6%。CNNは「僅差の勝利(razor-thin victory)」「歯の皮一枚ほどの差(skin-of-her-teeth margin)」と報じたが、これ以上ない表現と言えよう。

アイオワ州民主党支部長のアンディ・マクガイア氏がクリントン候補の名を挙げた頃、時計の針は2日の午前2時30分に差し掛かっていた。共和党の党員集会が各候補の講演を聴いた後に無記名で投票するシンプルな仕組みである一方、民主党の党員集会は区画ごとに候補者が支持を訴え15%の支持が集らなかった候補者は足切りとなる。足切り候補に投票した党員は別の候補者を選ばねばならず、撤退を表明したオマリー候補の支持者は再度候補者を選ぶ必要に迫られた。こうした事情が、選挙結果の正式発表を遅らせる要因となったことだろう。

2008年に得票率30.4%と3位に甘んじただけに、喜びもひとしお?
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(出所:WSJ

クリントン候補が勝利の美酒に酔いしれる暇なくニューハンプシャー州入りするなか、発行部数ナンバーワンのUSAトゥデー紙は、こう問い掛けた。「アイオワ州の悪夢再び:勝者は正しかったのか?(Iowa nightmare revisited: Was correct winner called on caucus night?)」。

振り返れば2012年もミット・ロムニー候補とリック・サントラム候補が大接戦を繰り広げ、ロムニー候補の勝利かと思いきやサントラム候補が事実上の逆転勝利を飾った。アイオワ州には、魔物が潜んでいるかのようだ

2016年の結果を受け、サンダース陣営は見直しを求めたようだが却下されてしまった。ニューハンプシャー州の予備選を9日に控え、両候補とも前進し続けるしかない。お膝元に近いサンダース候補にとっては、尚更だ。サンダース候補の2015年末時点での選挙資金は約7400万ドルと、クリントン候補の約1億1000万ドルには遠く及ばない。しかし同陣営によると若い支持層を中心に200ドル以下の小額寄付を積み上げ、わずか1ヵ月で2000万ドルを集めたという。対するクリントン候補には、スーパーPACを通じ著名な投資家ジョージ・ソロス氏が600万ドルもの政治献金を行っていた。まさにエスタブリッシュメントVS反エスタブリッシュメントの構図を描いており、今後も手に汗握る大接戦が予想されよう。クリントン候補はアイオワ州党員集会のコイン投げで全ての運を使い切ったのか?あるいは強運に恵まれ続けるのか、見守っていきたい。

(カバー写真:Dustin Oliver/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年2月4日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。