2015年10月-12月のGDPが予想を下回る前期比マイナス0.4%(年率マイナス1.4%)となったものの発表日の株式市場は見て見ぬふりで史上13番目の上げ幅となっています。マイナスに落ち込んだGDPに対する記事も少なく、正にかき消されたというのがふさわしいかと思います。
あまり目立った記事にならなかったその伏線には2017年4月から導入される消費税10%というスケジュール感が見て取れそうです。今回のGDPの下落の主導は全体の6割を占める個人消費がマイナス0.8%と振るわなかったこととされ、その理由を石原経済再生担当大臣は「暖冬」と理由づけしているようですが、そんな単純な切り口なのでしょうか?
日経NEEDSはこの速報値をベースに2015年度(16年3月まで)の成長率を計算したところ0.6%とはじき出しました。ちなみに2016年度は1.3%であります。
個人消費については四半期ベースで±1%以内のレンジで動いていることが多いのですが、やはり、長期的には低下しつつあるようです。それは高齢化と消費の成熟化があろうかと思います。個人の金銭管理とは不思議なものでキャッシュフローである収入があるときにはその収入に見合った消費をしようというマインドが働きますが、リタイアしたのち、年金収入だけとなり月々の基礎消費を賄えない場合、当然、最小限の支出とし、貯蓄の取り崩しを抑えようとします。例外は企業年金等で月々の基礎消費額を上回る収入がある人と使っても使い切れないほどの貯蓄がある人でしょうか。
また、今、高齢化を迎えている人たちはいわゆる高度成長期に「一億総中流」の標語の下に活躍された方が多く、他人と歩調を合わせる癖が強い世代でもあります。その結果、自分の周りが地味な消費生活をしていれば仮に自分はさほど節約しなくても大丈夫だとしてもマインド的に抑制力がかかりやすくなるでしょう。
話は変わりますが、先日、当地のIKEA(イケヤ)に事務所の家具を買いに行ったのですが、相も変わらず家族連れでごった返しています。思い起こせば私もカナダ来たばかりの24年前、自分のアパートの家具は全部IKEAで揃えましたし、他の駐在員の家族にも進んで勧めていました。そういう自分は徐々にこの家具に飽きが出てきて、自分用としてはもう15年近く、購入したことはありません。つまり、エントリーレベルの家具である同社から次第に次のレベルの家具に上方シフトしているわけです。
同様にユニクロもそうで確かに一昔前はちょくちょく買ったのですが、今ではほとんど買わないのはこちらも良質ではありますが、エントリーレベルで私はそこからテイクオフしたかったということだと思います。(言い換えるとユニクロのアメリカ展開はNYのど真ん中はアンテナショップにとどめ、もっと南部のショッピングモールでの展開の方が売れるような気がします。)
本来は消費は循環しなくてはいけません。エントリーレベルの店から高級品店までが人の収入の成長に合わせて徐々に上がって行き、全ての層に於いて繁栄の循環があることでうまくワークします。
住宅でも北米では取引件数の9割が中古で新築は1割、一方の日本はその真逆なのですが、その理由の一つに日本では中古を買う経済の循環のチェーンが切れているように見えるのです。更に悪いことにデフレ期を境に成長すべき購入品の金額水準が下がってきてしまい、またユニクロに戻っているようにすら感じるのです。これは日本独特の社会現象だと思っています。
こうなると日本のGDPが将来大きく跳ね上がることは何かの反動か、外的要因がない限り±2%レンジをさまようことになり続けるのでしょう。勿論、GDPの成長が全てではなく先日もちらっと書いた幸福度指数などが今後は効果的になるかもしれません。ただ、消費税導入という点に絞ってみればGDPの不調、特に個人消費の低迷はボディブローのように効いてくるでしょう。
当面、政府は17年4月の消費税引き上げについて「再考する予定はない」と言い続けるはずですが、あまりにも国内経済がふがいないと夏の選挙にはそれなりの影響は出てきそうな気がします。
発表されたGDPから政府の経済成長プランに暗雲かな、という思いを抱かずにはいられません。
では今日はこのぐらいで。
岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 2月16日付より