派遣社員こそ安定した働き方であり実は勝ち組だった

尾藤 克之
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著者の大崎氏。Leaders Styleより引用。

働き方に関する議論が熱を帯びています。これは突きつめると、個人と企業との関係性にいきつきます。個人と企業の関係性はどのように変化していくのでしょうか。

やりたいことを仕事にするなら、派遣社員をやりなさい」大崎玄長著(総合法令出版)は、「派遣社員こそ安定した働き方でありこれからの勝ち組である」というユニークな視点でまとめられた書籍です。

●派遣社員とはなにか

<雇用形態の違い>
まず最も大きな違いは、就労先との雇用形態になります。正社員が直接雇用であるのに対して派遣社員は契約会社との契約になるため、給料などは派遣会社から支払われます。また、指揮命令系統も派遣会社になります。その代わり、仕事先で何らか問題やトラブルが発生すれば、フォロー等の対応をおこないます。つまり派遣会社が派遣社員のエージェントであり代理人の役割を担っているのです。

さらに長期契約を高い評価で満期終了するなどして、派遣会社での評価が高くなれば他の条件の良い仕事を紹介されることがあります。契約期間についても、数週間の短期から年単位の長期まで様々です。

<派遣社員は派遣会社が守ってくれる>
正社員の場合、社内で理不尽な扱いを受けたり、トラブルがあっても我慢を要求されます。しかし、派遣社員の場合は派遣会社にお願いすれば契約終了になるので精神的なストレスは抱えずに済みます。職場の環境が合わなければ、トライアル期間で辞めることも容易です。

派遣社員に対するニーズは非常に高まっており、求人数が多いので、より自分の希望する条件に近いところを探し出すことが可能でしょう。サービス残業も強要されずに、むしろ融通を利かせてもらえます。

<自由度の高い働き方>
派遣社員の場合、社内の重要な業務を任せられたり、役職者になることは少ないものの、気軽に働けることがいまのニーズに合致しているともいえます。自分の時間も持ちやすく、ワーク・ライフ・バランスを充実させやすいので、やりたい事に時間を使うことが可能です。また、正社員では入りにくい有名大手企業の求人も多く、条件を満たせば比較的簡単に就業することもできます。

●あとは働き方の問題

<社会保険も充実している派遣社員>
派遣社員の立場は弱いと考えている人は少なくありません。正社員に適用される社会保険や福利厚生が派遣社員には適用されないと考えている人が多いためです。しかし、正社員に労働法規が適用されるように派遣社員にも適用されます。

社会保険に関しては、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険の4つがありますが、これは派遣社員にも適用され、派遣会社は派遣社員に適用させる義務が生じます。その点は、正社員も派遣社員も大きな差があるわけではありません。

<身分の違いと安定性は>
最も大きな差は、正社員が期間の定めないことに対して、派遣社員は期間の定めがある有期雇用であることです。この点だけをみれば、派遣社員は安定しない、立場が弱いという解釈になるのだと思います。さらに、安定していない非正規であるため人員整理の対象になりやすい。派遣先によっては正社員並みの仕事や業務外の仕事を押し付けられる可能性がある。昇給、賞与はまったく期待できないなどの意見もあります。

しかし、企業の傾向としては、正社員以外の派遣社員を積極的に活用していこうという動きがあるのも事実です。正社員と比較すると条件面での差が生じてしまうため、不公平感を生じやすいなどの問題があるものの、正社員登用のキャリアが用意されていたり、実績給を支給する企業も増えています。派遣社員にとって良い環境下で働くことは大きなメリットですが、雇用関係の情報はクローズなものが多いため一般的に公開されている情報ではありません。アンテナを張り巡らせて情報志向性を高めておくことも必要でしょう。

<最後に決めるのは自分自身>
そして、どのような働き方を選択しようとも、その責任を最終的に負うのは自分だということ。最後は自分が納得して働ける環境であるかが判断基準になります。しかし以前に比べて、派遣社員のキャリアや可能性が大きく変化したことは間違いないようです。

尾藤克之
コラムニスト
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