マネッジドフューチャーズは、商品先物市場や、金利、通貨、株価などの金融先物市場を舞台とした投資対象である。しかし、投資対象なのは、先物そのものではなくて、先物の価格変動に内在する一定の規則性に基づく取引手法であって、この手法の規律正しい適用が生み出す収益が投資対象なのである。
問題は、なぜ先物の価格変動に一定の規則性が生まれるかである。ここに科学的な説明がつかない限り、マネッジドフューチャーズは投資対象になり得ない。答えは、ヘッジと投機の衝突である。
先物市場は、第一義的には、商品の生産者や金融機関等にとって、ヘッジのために利用されるものである。しかし、先物市場がヘッジ機能をもつためには、ヘッジのための売りや買いの取引に対して、反対の買いや売りの取引が均衡しなくてはならない。例えば、売りのヘッジだとして、売り方だけでは価格が暴落して、ヘッジにならないのである。
実際、商品価格が低迷していたときには、生産者のヘッジ需要が強くなり、先物市場での売り圧力が大きくなって、そのことが価格の更なる低下を招くという悪循環、生産者にとっては、自分で自分の首を絞めるような不合理があったのである。
この問題を解くためには、先物市場に生産者とは違った思惑をもつ投機資金を呼び込むしかない。故に、先物市場は、半分は投機で、半分は産業界や金融界のヘッジである。投機とヘッジが正面からぶつかるとき、双方の相対優位関係について、一定の周期性のあることが経験的に知られており、それが価格変動の一定の規則性を生むわけである。
どのような規則性を発見するかは、マネッジドフューチャーズの運用者の能力である。罫線(チャート分析)というのは、伝統的手法の一例だし、長期の経験に基づく感性も必要だろうし、今では、最高度の統計処理技術も利用されている。
さて、投機資金の流入が大きくなると、買いにしても、売りにしても、ヘッジの占める比重は低下する。おそらくは、もはや、先物市場では、投機と投機が衝突しているのである。はたして、投機と投機の衝突は、ヘッジと投機の衝突のように、一定の価格変動の規則性を生むのだろうか。
森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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