▲「3.11」は鉄道が止まり、首都圏で500万の帰宅困難者が出た(写真ACより、アゴラ編集部)
現代社会に生きる我々は、あの5年前の3.11を決して忘れてはいけない。そして、地震大国かつ鉄道大国である日本において、大地震への鉄道の備えは、どれだけ手厚くしても、し過ぎることはない。
我々は、3.11により、起きて欲しくないことに目をつぶり、起きたら「想定外」と称することは許されないと学んだ。そして、健全な危機意識を持った上で、備えようがないと諦めてはいけない。平日朝8時に首都直下地震に襲われた場合の最悪シナリオは以下だ。
【沿線革命045】平日朝8時に首都直下地震に襲われたら鉄道はどうなる?
阪神・淡路大震災では鉄道に関わる死者がゼロだったのは早朝だったからに過ぎず、また直下地震では早期地震警報システムは効力を発揮できない。平日朝8時に首都直下地震に襲われたら、多数の満員電車が脱線転覆、衝突するかも知れない。目をつぶりたくなるが、決して目をつぶってはいけない。
鉄道各社とも、多額の経費を投じ、高架橋や橋梁、駅舎の天井や壁、盛土や切取ののり面、電化柱その他を補強している。地震観測体制や緊急停止装置、非常用の通信網や電源設備を整備している。地震に関するマニュアルを整備し従事員を教育・訓練している。
ところが、大地震への鉄道の備えとして非常に重要な2つが充分でない。通常の線路が大変形を起こして高速で走行する多数の電車が脱線することと、列車の減速度が低くすぐに止まれないことだ。線路の大変形を減らす道床安定剤の散布が有効かつ低費用であり、また車輪のフランジを高くして脱線確率を下げたい。さらに、レールブレーキにより乗用車の非常ブレーキ程度の減速度を持たせたい。
【沿線革命046】鉄道が平日朝8時に首都直下地震に襲われても被害を最小に
道床安定剤・車輪フランジ高く・レールブレーキ・展伸機による脱線防止という4提案は、大地震の被害を軽減するのに必ず役立ち、かつ莫大なコストは要さない。1日も早い導入を強く願っている。
また、3.11では首都圏の鉄道は長期に運転不能となる大きな設備損壊はなかったのに、数百万人の帰宅難民が発生した。体制を整えれば、もっと素早く安全確認し早期に運転再開できるはずだ。
【沿線革命048】地震発生! 鉄道をいち早く運転再開させるには
最後に以下をご覧願いたい。「鉄道の地震対策とテロ対策はいつやるの?」「今でしょ!」
【沿線革命058】JR連続不審火、首都直下地震…「防災の日」に鉄道の安全対策を考える
「ある消防隊員の至言。はしご車が1台1億円はくだらないというお話を聞いて仰天していた私に…1人でも助けられればもう元は取れますよ。でも、廃車まで1回も出番がないことが一番良い」
読者諸兄の皆様、日本の安全・安心のため、3.11を機に大地震への鉄道への備えの重要性と具体的な対策をじっくりとお考え願いたい。
阿部 等・(株)ライトレール・代表取締役社長