共産党は野党共闘で勢力拡大を狙うが…(赤旗より、アゴラ編集部)
単純です。もともと、小選挙区での擁立を大幅に減らしたかったので、安保法制反対での共闘をその口実に使っているだけです。つまり、渡りに舟なのです。ところが、民進党は目先の票に目がくらんで共産党に対して当然にもつべき警戒心を忘れているというか、あえて見て見ぬふりをしている。これは危険な兆候です。
共産党は衆議院小選挙区や参議院一人区で候補者をすべての選挙区で候補者を立ててきましたが、1996年の第一回で二人の当選を出しただけでそれ以降はゼロで2003年総選挙では8割近くの選挙区で供託金が没収になりました。一人300万円(比例と重複だと600万円)ですからかなり痛い金額でした。
そこで、2005、2009年にはついに空白区をつくりました。そののち2012,2014年ではほぼ全選挙区に候補者を立てました。これは、民主党が候補者を出さない選挙区が多かったことも理由で、供託金没収も2014年には33%に減少しました。また、沖縄では4選挙区で野党協力し、おかげで一人が当選しました。
しかし、こういう無駄な選挙は惰性でやっているだけで、本音では小選挙区での擁立を公明党や維新のくらいに減らしたかったのです。もし公明党と自民党の関係のように少数の選挙区で民進党に譲らせるとか、それが実現しなくても、無所属と称してシンパや、もしかすると秘密党員チックな候補者を潜り込ませることができれば御の字なのです。
ところが、全選挙区での擁立を止めると後退とみられるとか、長老たちの反発も強いのでできないでいます。それを国民連合政府とか安保法制反対とかいう口実をつけてやろうというだけのことなので思い切った英断でも何でもないのです。今回の参議院選挙でも民主党の候補者を推すだけでなく、無所属の候補者になっているところがあるのが不気味です。
京都第三区の補選で候補者を立てないというので、あの共産党が強い京都でと話題になっていますが、前回の総選挙で自民の宮崎謙介が当選し、民主の泉健太が惜敗率が92、共産党は45、維新が42でした。供託金没収ではありませんが、共産が無理して候補者を出したい選挙区ではありません。
共産党との協力については、①そもそも欧米的民主主義の枠内にない政党だとか、②全般的な政策協定なしにシングルイシューで共闘を組むのは民主主義の邪道でないかといった問題もあるし、それが自民党と公明党の協力とも、地方選挙での協力とも違うところです。それはまた別の機会に論じたいと思います。
八幡和郎 評論家・歴史作家。徳島文理大学大学院教授。
滋賀県大津市出身。東京大学法学部を経て1975年通商産業省入省。入省後官費留学生としてフランス国立行政学院(ENA)留学。通産省大臣官房法令審査委員、通商政策局北西アジア課長、官房情報管理課長などを歴任し、1997年退官。2004年より徳島文理大学大学院教授。著書に『歴代総理の通信簿』(PHP文庫)『地方維新vs.土着権力 〈47都道府県〉政治地図』(文春新書)『吉田松陰名言集 思えば得るあり学べば為すあり』(宝島SUGOI文庫)など多数。
編集部より;この原稿は八幡和郎氏のFacebook投稿にご本人が加筆、アゴラに寄稿いただました。心より御礼申し上げます。