3月15日のミニ・スーパーチューズデーの後、異変が生じています。
地元フロリダ州でトランプ候補に完全敗北を喫したルビオ候補が撤退した後、共和党米大統領候補の支持率はそれぞれ急伸しました。特に上昇が目立った候補は・・。
トランプ氏です。こちらをご覧下さい。
(出所:RealClearPolitics)
世論調査結果の平均値では、3月17~20日実施のCNN/ORC及びCBS/ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)後の数字をみるとトランプ候補(青)が41.5%と、3月16~17日実施のラムスセン・レポートの結果までを反映した37.5%から急伸しています。クルーズ候補(黒、26.7%→28.0%)、ケーシック候補(紫、18.7%→20.0%)と比較し、その躍進が目覚ましい。2015年11月13日のパリ同時多発テロ事件、同年12月2日のサンバーナディーノ銃乱射事件を経てトランプ候補がイスラム教徒入国禁止を主張した後、支持率を伸ばしただけに(2015年11月1日時点で27.0%→同年12月28日に36.5%)、今回のブリュッセル同時爆発攻撃事件も、勢いづくトランプ候補の追い風となるか注目です。
既にトランプ候補は、フォックス・ニュースとのインタビューで「自分なら詳細が判明するまで国境を封鎖する」と発言。イスラム国の関与を早くから示唆し、尋問に「水責め」のような拷問を加えるよう主張しました。欧州など世界に散らばる米軍など、過剰な資源の撤退も求めています。これに対し、ケーシック候補は声明で「我々の一部である同盟関係、並びに第二次大戦以降から共有する普遍的な価値観のもとに国際的システムを強化しなければならない」と反論しました。クルーズ候補はイスラム教徒が居住する地域の警察官によるパトロールの強化を求め「(住民のイスラム教徒が)過激派に転じる前に、近隣を保護する必要がある」と語っています。この意見には、トランプ候補も賛同していました。ちなみに、民主党のクリントン候補は「監視体制、通信傍受の徹底化」に言及しています。
3月22日には共和党の予備選がアリゾナ州で、党員集会がユタで開催されました。アリゾナ州は勝者総取り方式で、トップがトランプ候補という状況とあって58人の代議員数を獲得。問題は比例方式のユタ州で、首位が50%以上を得票した場合は勝者総取り方式に切り替わるといいます。トランプ候補が過半数を取ってここを制すれば、7月18~21日開催の共和党大会で米大統領候補として正式に指名を受ける獲得代議数1237を超える確率が上昇するというもの。しかしユタ州でクルーズ候補が50%以上を確保し、勝者総取りの権利を得ました。というわけで、トランプ候補が引き続き過半数の壁を越えられるか微妙な情勢です。ブリュッセル同時爆発攻撃の後、トランプ候補の過激な発言がどのように受け止められるのでしょうか。
なお、本選を見据えた共和党候補VS民主党クリントン候補の世論調査結果は最新版で以下の通り(RealClearPoliticsによる平均値)。
クリントン候補 49.0% > トランプ候補 39.2%
支持率の格差は、ご覧のように拡大中(青がクリントン候補、赤がトランプ候補)
(出所:RealClearPolitics)
クリントン候補 46.8% > クルーズ候補 45.8%
クリントン候補 42.8% < ケーシック候補 48.0%
クリントン候補が再び、対クルーズ候補でも優勢に転じつつあります。主流派のケーシック候補との戦いであれば、劣勢で変わらず。クリントン候補にとって、最も望ましいシナリオこそトランプ共和党・米大統領候補の誕生と言えます。
(カバー写真:Disney | ABC Television Group/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年3月23日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。