消費増税は再延期せよ

再来月「開催されるG7サミットの議長国として、現下の世界的な経済状況に適切に対応するため、世界の経済・金融情勢について、内外の有識者から順次見解を聴取し、意見交換を行う」べく今月中旬より「国際金融経済分析会合」が開催されています。

コロンビア大学教授のジョセフ・スティグリッツ、ハーバード大学教授のデール・ジョルゲンソンに続いて3度目を数えた昨日は、ニューヨーク市立大学教授のポール・クルーグマンを講師として招いたようです。

世界トップクラスの経済学者を首相官邸に招き入れ、1年後予定される日本の消費増税等につき議論させているわけですが、こうした世界的な経済学者を利用して現政権としては17年4月に増税をやるべきではないと言い出すのではと思います。

之に対しては野党再編の「邪魔者」岡田克也氏は消費税増税を止めるなら「安倍総理大臣は、みずからの経済政策、アベノミクスの失敗を認めるべきだという考えを示し」ているわけですが、安倍さんとしては此の今というタイミングでの再増税が本当に日本の為にならないと考えていると思います。

ノーベル賞級の経済学者の見解全てを聞いてみるまでもなく、前回の97年以来17年ぶりの消費税率引き上げ一つをに見てみても、「それだけで8兆円以上の負担増になり、家計にも相当大きな負担がのしかか」って、日本経済は大変なネガティブインパクトを被ったわけです。

日本銀行の試算に拠れば予定通りの税率引き上げによっては、「29年度のGDP成長率を0.7ポイント押し下げる」ということですが、現下の日本経済の置かれた状況そして未だ不透明感漂う世界経済の現況等々を勘考するに、私は17年4月増税など絶対にすべきでないと思っています。

一昨年11月、安倍さんは「平成29年4月には確実に10%へ消費税を引き上げるということ」を約束し、突然の解散総選挙で以て消費再増税延期という難事を成し遂げました。但し私に言わせれば、その時された発言に問題があったのではないかと思います。

つまり、あの時点で安倍さんはシンプルに、再増税を延期すること及び経済に自信を得た局面で実施するとだけ、国民と約束されたら良かったのではないかと思うのです。何時まで延期する等と余計なことを言われる必要はなかったわけです。

昨今の御発言を聞いていても、「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り、確実に実施していく」と言われてみたり、「世界経済の大幅な収縮が起きているか、専門的見地の分析も踏まえ、政治判断で決める」と言われてみたりと、兎に角そういう余計なことは言われなくて良いのです。

将来の事象など所詮“Nobody knows”なのですから、ものを言う時はシンプルに言葉を選んで発すべきです。人間余計なことを言えば、後々色々と苦労しなければならなくなるのです。

何れにせよ「平成29年4月には確実に10%へ」との約束は最早それはそれとして、時の経済状況に変化が見られたのですから、安倍さんは当たり前のように前言を撤回すべきです。いま世の中の変化というのは、そのぐらい激しいものです。ひょっとしたら寧ろ財政刺激をやらねばならない感すらあるのが実体経済の現況です。故に安倍さんは涼しい顔で政策変更に踏み切れば良いのです。

上記してきた通り勿論、一旦コミットメントした事柄ですから、一応の大義名分というものは必要です。そういう意味で小生の結論としては、安倍さんは国民に対してノーベル経済学賞受賞者の教授陣が異口同音に「現在のタイミングでは消費税を引き上げる時期ではない」との認識を示している、とだけシンプルに述べられて政策の正当性を主張されれば良いのではないかということです。

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