関西電力高浜原発の運転差し止めを命じた大津地裁の仮処分決定をめぐり、関電の八木誠社長が「上級審で逆転勝訴した場合、(申し立てた住民への)損害賠償請求は検討の対象になりうる」と発言した。
それに対して、仮処分を申し立てた住民側の弁護団などが「司法手続きに沿って申し立てをした人への完全な脅迫。あるまじきことだ」と抗議文を送ったそうだ。
住民への提訴は「理不尽」か?
しかし、私は訴訟しなければ株主訴訟で役員の方が賠償責任を問われる可能性があり当然に訴訟をすべきだと思う。
たしかに、そういう訴訟を原告がされ月100億円の損失の賠償を要求されることは理不尽である。しかし、地裁の裁判官の気まぐれで突飛な判決で、即日、原発停止が不服審査も待たずに止まって天文学的な損害を関西電力、というより関西の地域住民に押しつけるのも理不尽なのである。(それは京都に住んでいる私にとって夏の暑さをしのぐために冷房するのを遠慮しなくてならないとんでもない災難だ。
原発即刻停止も巨額賠償の可能性も両方とも理不尽なのは、愚かな裁判官よりも法制度の不備である。下級審の判断で天文学的な経済的損失が出るような理不尽ををなくせば、こういう裁判の原告が理不尽な賠償責任を負うこともなくなる。
関電は勇気を持って賠償責任を問う訴訟をすべきである。それによって原告が困らないようにするのは立法の責任だ。さらに、理不尽だと思えば裁判制度に抜本的な改革の手を入れるべきだ。
裁判官の浮世離れな特権も問題だ
それにしても裁判官たちの浮き世離れぶりもひどいものだ。だいたい、地裁の所長の給与が大学の学長や国会議員、事務次官より高いという現状ひとつとっても無茶苦茶である。最高裁の長官の給与が三権分立を口実に総理なみだというのも同様。三権分立の本場のアメリカでも大統領の半分くらいと聞く。
むかしは、裁判官はほかの公務員より清廉潔白でなくてはならず、もらい物などフリンジベネフィットがないのだから給与が高いとかいわれたこともあったが、いまは、他の公務員もそういう役得はないのに裁判官の特権的高給だけが残った。
しかも65歳の定年までその給与の高さに応じたかたはずれに豪華な公務員住宅に住み続けられる。その歳になったら、子供も独立しているのが普通だから、老後用の小住宅だけを心配すればいいのである。
八幡和郎 評論家・歴史作家。徳島文理大学大学院教授。
滋賀県大津市出身。東京大学法学部を経て1975年通商産業省入省。入省後官費留学生としてフランス国立行政学院(ENA)留学。通産省大臣官房法令審査委員、通商政策局北西アジア課長、官房情報管理課長などを歴任し、1997年退官。2004年より徳島文理大学大学院教授。著書に『歴代総理の通信簿』(PHP文庫)『地方維新vs.土着権力 〈47都道府県〉政治地図』(文春新書)『吉田松陰名言集 思えば得るあり学べば為すあり』(宝島SUGOI文庫)など多数。
編集部より;この原稿は八幡和郎氏のFacebook投稿にご本人が加筆、アゴラに寄稿いただました。心より御礼申し上げます。