2月に都銀は中期債を大量売り越し、海外勢は買い越し --- 久保田 博幸

3月22日に日本証券業協会(JSDA)は2月の公社債投資家別売買高を公表した。発表される公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっているため、短期債を除く債券のデータについて全体から短期債を引いた。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。それが下記となる。

2月の公社債投資家別差し引き売買高 注意、マイナスが買い越し、単位・億円 ()内は国債の投資家別売買高の超長期・長期・中期別 都市銀行 20763(-1686、865、23149) 地方銀行 542(-1411、4412、345) 信託銀行 2046(1379、-4880、3519) 農林系金融機関 -2783(-2353、475、50) 第二地銀協加盟行 -2056(-1541、349、-10) 信用金庫 -1841(-402、303、876) その他金融機関 -2606(-1091、-406、-1549) 生保・損保 -5266(-4190、976、692) 投資信託 1378(-20、524、971) 官公庁共済組合 283(146、0、325) 事業法人 -782(1、-22、13) その他法人 -426(185、-72、221) 外国人 -26356(-400、-1310、-26892) 個人 385(18、63、8) その他 1380(3484、214、3645) 債券ディーラー 1107(696、453、12)

目立っているのは都銀の売り越しと海外投資家の買い越しである。都銀は中期ゾーンを中心に2兆円を越す売り越しとなった。売り越しは2か月ぶりとなる。これに対して海外投資家は中期ゾーンを中心に2.6兆円もの買い越しとなった。海外投資家の買い越しは20か月連続となった。

1月29日の日銀の金融政策決定会合のマイナス金利政策の決定と2月16日からのマイナス金利の施行により、国債のマイナス金利化が一気に進んでいた。2月9日には10年国債の利回りがマイナスとなり、その後プラスに戻したものの、18日には再びマイナスに転じている。この間、2年債や5年債の利回りはマイナスの状態となっていた。

この集計については発行時の年限がベースとなっているため、長期債に分類されていても残存が2年や5年といった10年国債も含まれている。それも意識しながら数値をみてみると、少なくとも中期債を買い越しているのは海外投資家を除くと「その他金融機関」と「第二地銀協加盟行」だけとなる。その他金融機関には在日外銀なども含まれているため、買い越しとなっているとみられる。

長期債については海外投資家、その他金融機関、さらに信託銀行が買い越しとなっている。信託銀行はプラス利回りとなっていたときに10年債のカレント中心に買い越していた可能性はあるが、何かしらの事情もあったのかもしれない。

そして、超長期債については主な投資家が買い越しとなっており争奪戦の様相となっている。この状況は3月に入りさらに顕著になっているのではなかろうか。

気になるところの国債売買高であるが、昨年11月に一時落ち込んだものの、その後は回復基調となっている。いまのところ国債の売買高で見る限りは、流動性がそれほど大きく低下しているわけではない。

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久保田博幸(くぼた ひろゆき)
1958年、神奈川県生まれ。慶応義塾大学法学部卒。
証券会社の債券部で14年間、国債を中心とする債券ディーリング業務に従事する傍ら、1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。専門は日本の債券市場の分析。特に日本国債の動向や日銀の金融政策について詳しい。現在、金融アナリストとしてQUICKなどにコラムを配信している。また、「牛さん熊さんの本日の債券」というメルマガを配信中。2015年まぐまぐ大賞で資産運用部門第2位を受賞。日本アナリスト協会検定会員。

主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「聞け! 是清の警告 アベノミクスが学ぶべき「出口」の教訓」すばる舎、「短期金融市場の基本がよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

「債券ディーリングルーム」http://fp.st23.arena.ne.jp/
「牛さん熊さんブログ」 http://bullbear.exblog.jp/

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編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2016年3月24日の記事を転載させていただきました。転載を快諾くだいました久保田氏に心より御礼いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。