これ重要な観点です。
不倫って社会問題だよね。
とかく、不倫というのは「個人の問題」とされがちです。
もちろん個々のトラブルは当事者同士で勝手にしてくれという感じですが、「不倫」という「現象」自体は「社会問題」として捉えることができます。
というわけで、こちらの一冊をご紹介。意欲作です。
既婚者が「不倫」の誘惑に抵抗するために何ができるか・どうするか?
多くの社会問題の背景に潜む「不倫」は個人のモラルの問題として捉えられており「社会の問題」として捉えられることは少ない。本書では、既存の「結婚」に囚われない多様なあり方を実践している男女への取材をまじえながら、「不倫」を「社会の問題」として捉えなおすことによって「不倫」の予防と回避のための処方箋を提供する。本邦初の実践的不倫学!
まずは、この指摘。重要です。
不倫は、予期せぬ交通事故やインフルエンザのように、夫婦間の愛情や信頼の有無・多寡に関係なく、誰にでも突然起こる可能性がある。
不倫が苦しいのは、相手に心を奪われるからだ。そして、心を奪われるということは、いつでも、どこでも、誰にでも起こり得る。社会生活を営む限り、いつ、どこで、誰に、どのように、どの程度の深度でえぐられ、奪われるかは予想がつかない。
不倫経験者の多くは、「まさか自分が不倫する(される)とは思っていなかった」と語る。
思春期の疾風怒濤に振り回される中学生と同様、配偶者以外の相手との恋愛やセックス(婚外恋愛・婚外セックス)に対しては、当たり前だが誰も免疫を持っていない。分別のある大人が初恋に狂った中学2年生のような言動を取ってしまう。
では不倫をどのように予防するのか。ここだけ抜粋すると炎上しそうですね!w
本書の結論を一言でまとめると、「現行の夫婦関係を維持するための(=不倫ワクチンとしての)ポジティヴ婚外セックスは、条件付き(期間限定・回数限定)で社会的に受容されるべき」となる。
受容されるための条件とは、「個人間の関係ではなく、システム=文化制度の下で行うこと」「対象と回数を限定して行うこと」の2点である。
言うなれば、介護や育児の外部委託と同じだ。子どもや要介護の家族の世話を、24時間365日、第三者に丸投げしてしまうのは大問題だが、家庭を維持するための経済活動(就労)や再生産活動(家事や休息)を行うために、制度の下で対象者の年齢や属性、利用回数に上限を設けた上で、一時的に保育園やデイサービスの力を借りることは、道徳的にも社会的にも全く問題がないだろう。
この視点!なんて挑戦的。もはやロック。
もちろん、「たとえ条件付きであっても、不倫を認めるなんてけしからん」「そんなことをしたら、伝統的家族が崩壊する」という意見もあるだろう。
しかし、いくら道徳論を声高に叫んでも、私たちの社会が一夫一婦制を採用し続ける限り、これまでも、そしてこれからも不倫に走る人はいなくならない。不倫ウイルスに感染した人は急に不倫をやめることはできないし、強制的にやめさせることもできない。
法律や戒律で禁止しただけでは不倫は決してなくならないということは、これまで見てきた通り歴史が証明している。
だとするならばせめて、不倫ワクチンとしてのポジティヴ婚外セックスを社会的に条件付きで受容した上でその安全性を向上させ、性感染症や家庭崩壊などの悲劇の発生率を少しでも低めるべきだ。
それによって、不倫そのものを止めることはできなくても、当事者の精神破綻や家庭破綻などの悲劇は少しでも減らせるはずだ。
皮肉な言い方をすれば、これまでの「伝統的家族」は、女性にのみ貞操義務を課し、男性の不倫願望を性風俗や売買春の場で発散させ、そこで働く女性に全てのリスクとスティグマ(差別や偏見などの負の烙印)を押し付けるといういびつな仕組みによって、どうにか維持されてきたのではないだろうか。婚外セックスに伴うリスクとスティグマは、家庭や社会の外側にある性産業に丸投げするのではなく、家庭や社会の内側で受益者が責任をもって均等負担するべきだろう。
うーん、エキサイティングな論考です。不倫を社会問題だと捉えると、どのような解決策がありえるのか……。みなさんはどう考えます?
ぶっちゃけ、坂爪さんが語っている解決策は、現実的ではないと思いますw ありえるとしても、ごく一部にとどまるんじゃないかなぁ。
ではどうするか。
……というと、言葉に詰まるから難しい。「姦通罪」を復活させるというのも、なんか違うでしょうし。
本書にも記述がありますが、まずできるのは、「不倫というのは誰にでもかかる病である」「そしてろくなことはない」ということを教育することなのでしょう。
もう少し先の未来では、バーチャルリアリティが解決策になるのかも……と思ったり。「ルサンチマン」並みバーチャルリアリティが進化すれば、恋愛やセックスの概念は変わるんじゃないかな。
この記事は、イケダハヤト氏のブログ「まだ東京で消耗しているの?」2016年3月28日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいたイケダさんに御礼申し上げます。オリジナル原稿を読みたい方はまだ東京で消耗しているの?をご覧ください。