シェアオフィスの居心地

岡本 裕明

実は3月初めから事務所をシェアオフィスに移転しました。同じ雑居ビルの別のフロアにあったシェアオフィスで今までの事務所のリース期間満了に伴い、思いきって事務所の中を断捨離して今までの4分の1ぐらいの小さなスペースに収まっています。正直、居心地はとても良い、これがひと月経った時点での印象です。

大きさは4分の1ですが、リース料は半分、つまり、スペース当たりの単価は倍になっているのですが、あまり使わない会議室、人がいないワークスペース、ほとんど客が来ないのに立派な受付スペースなど無駄のオンパレードでしたから使い勝手としては特にこじんまりした感じはしません。

特にオフィスのシェアの場合、受付にはしっかり2人ぐらい座っていてすがすがしい朝の挨拶もありますし、ロビーも新しい家具や調度品で揃えています。コーヒーやお茶なども飲み放題。郵便は取りに行ってくれますし、来客が来れば電話で知らせてくれます。つまり、自分の会社に受付嬢を雇ったようなものなのです。

もう一つのメリットは「賑わい」。オフィスとは人がいて、電話が鳴って、声が聞こえてくるのが普通ですが、自分の事務所を借りていた時はひっそりしてました。今はドア越しに様々な雑音程度の「事務所の音」が聴こえてくるため、むしろ頑張って仕事をしようという気にさせるのです。

シェアならではの特徴としてはさまざまなものが適宜アップグレードされていく点でしょうか?自分の事務所だとコピーや冷蔵庫、家具、インターネットのスピード、清掃のレベルなど案外、目が届かなかったり、我慢してしまうことがあります。ところがシェアは様々な会社の人の意見が集約されますので個人の好みというより一般的に必要と思われるアップグレードが自分たちの意思とは別になされる点が便利なのです。大画面テレビもロビーにあり、好きなものを見ることが出来るし、ランチスペースもしっかり備わっています。

ご承知の通り、私は東京でシェアハウスの事業をしています。が、私自身、シェアハウスには住んだことがありませんでしたからあえて、シェアオフィスで疑似体験をしてみたいという気持ちもあったのです。ポジショントークだと思われるかもしれませんが、シェアの世界は自分の頭で考えている以上に便利だと実感しています。

自分が占有したいもの、共有でも問題ないものは割とはっきり区別できると思います。シェアハウスですとアイロンや掃除機は別に自分のモノを抱え込んでいなくても問題ありません。事務所では大型のコピー機やシュレッダーはシェアで問題ないでしょう。

これを事業主の面から考えてみましょう。私は今、スペース当たりに単価をかつての2倍払っていますが、それでも以前以上に満足しています。つまり、このシェアオフィスの事業主は付加価値を創造し、当然、一定の利潤を得ています。不動産を単なる賃貸として貸し出せばベーシックな賃料は入りますが、大家が工夫をすれば賃料は二倍にも増やすことが出来るのです。

多くの日本の大家さんは「うちのアパートが埋まらなくて…」「賃料、そろそろ上げたいんだけどねぇ」という悩みは多いと思います。が、何もせずに時間経過だけで賃料が上がる時代は昔の話です。ではアップグレードすれば客がくるのか、といえばそうでもないのです。

設備とサービスを切り離して考えてみたらどうでしょうか?多くの日本の不動産屋はテナント募集に際してキッチンやバスなど水廻りのアップグレードを大家さんに求めると思います。設備のアップグレーも必要かもしれませんが、それよりも「そこに住みたい」というキャッチを生み出すことがもっと重要なのではないでしょうか?
私はサービスにその原点があると思っています。

実は私が入居しているシェアオフィスは世界的に著名なチェーンで日本にも相当数あります。先日、新宿の拠点をじっくり拝見させていただいたのですが、設備などは立派です。ただ、カナダほどゆったりはしていないことと家賃を聞いて目の玉が飛び出ました。多分、スペース当たりの単価で比べるとカナダの二倍以上すると思います。それほど払うと費用対効果は何処まであるのかな、と思ってしまいます。

ちなみに私は東京で事務所のリース事業もやっているのですが、これはシャッター街の閉店した商店の一つを借り、私の費用で内部を事務所仕様に改修し、テナントを入れ、改修費用を上乗せして賃貸を設定するという余り前例のない「新型事業」であります。エンドユーザー付きだったので事務所改修の費用負担やデザイン面でやりやすかったのですが、シェアオフィスがあまりにも暴利をむさぼるようならばシャッター街はかなりねらい目の安上がりな不動産転用だと思います。

要はダメダメを変える発想だと思います。何事も一歩踏み出すと案外霧は晴れるものではないでしょうか?

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 3月30日付より