独日刊紙ヴェルト(3月30日電子版)が報じたドイツの昨年警察犯罪統計によると、住居侵入窃盗認知件数は16万7136件で前年(15万2123件)比で9.9%の急増だった。前年は過去15年間の最悪件数を記録したが、昨年はそれをも上回ったわけだ。ちなみに、東西両ドイツ再統合後の過去最高は1993年の22万7000件だ。10年前の2005年は10万9736件だったから住居侵入窃盗犯罪の急増は著しいわけだ。
住居侵入窃盗件数が急増した州・特別市はハンブルク市で前年比で20.2%急増、 それについてノルトライン=ヴェストファーレン州18.1%増、 二―ダーザクセン州13.1%増だ。
住居侵入窃盗犯罪の犠牲者は被害を受けた後、数カ月、時には数年間もストレスを抱えるという。自身の個人の世界、家庭の世界に全く知らない人間が土足で入ってきたという恐怖が払拭できず、悩む犠牲者が多いわけだ。犠牲者には不安や睡眠障害などの症状を抱える人がいる。4人に1人の犠牲者は事件後、住居を変更したいと考え、10%は実際変更したという。犠牲者の後遺症は部外者では理解できないほど、深刻なわけだ。
独トーマス・デメジエール内相は住居侵入窃盗犯罪の急増に懸念を表明している。同相は住居侵入窃盗犯罪の対策を強化し、国民の安全意識を高めていく考えで、連邦犯罪局に対策をまとめるように指令を出している。住居侵入窃盗犯罪グループは主に東欧諸国出身のグループであり、犯罪後は素早く出国していくという。
警察犯罪統計によると、ドイツの昨年犯罪総件数は約633万件で、前年比で4.1%増加。前年と同様600万件台をオーバーした。一方、検挙率は昨年、56.3%で前年比で1.4%で向上した。
犯罪種目では、犯罪総件数のほぼ40%が窃盗で、前年比で1.8%増加で248万件だ。特に、店舗内窃盗、スリ件数が急増。店舗内窃盗件数は39万1401件で前年比で7.1%増、スリ件数は16万8142件、7%増だった。
車両窃盗件数は前年比で0.3%微増で、3万6507台の車両が盗まれた。一方、自転車窃盗件数は33万5174件で前年比1.3%増加した。性犯罪(性的虐待や暴行)は7022件で前年比で4.4%減だった。
同国犯罪関係者によると、昨年、2、3の犯罪が増加した主因として、移住者の増加を挙げている。具体的には、外国人滞在関連法や難民申請関連法に違反する件数が急増し、前年比で157.5%と大幅に増加し、40万2741件だった。
容疑者数は236万人で前年比で10.2%増加した。その中で、、ドイツ人ではない容疑者(外国人)数は91万1864人で前年比で47.7%急増した。
以上、ヴェルト紙の記事をもとに紹介した。
どの国のものであれ、犯罪統計は国民の安全感覚と一致しないケースが少なくない。犯罪総件数が減少しても国民の安全への実感が即改善される保証はない。ドイツの場合、住宅侵入窃盗犯罪の急増は国民を不安にさせる大きな要因となっている。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2016年4月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。