ダメ面接官は最初に自己PRと志望動機を聞く --- 曽和 利光

アゴラ

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面接の質を高めるために人事担当者が取り組むべきこととは? ダメな面接官に共通する特徴を取り上げながら、面接の質を向上させ、採用力を高めるためのノウハウをお伝えする好評連載「ダメ面接官の10の習慣」。第7回のテーマは「ダメ面接官は最初に自己PRと志望動機を聞く」です。

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※本記事はビズリーチ運営のオウンドメディア「HR review」からの転載PR記事です。

人は大昔から「見たいものしか見ない」生き物

「では、まず自己PRをお願いします」と切り出して面接を始める――。

心当たりのある方は意外に多いのではないでしょうか。しかしながら、私はあまりこれをお勧めしません。なぜなら、人には「確証バイアス」があるからです。「確証バイアス」とは、自分が持っている仮説や信念を支持する情報ばかりを集めて、反証する情報を無視、または集めようとしない傾向のことをいいます。

古代ローマの将軍、政治家のカエサルも、「人間はみな自分の見たいものしか見ようとしない」と言ったそうです。面接でも、最初に候補者から「自分はこんな人間です」という印象を与えられ、「そうかもしれない」といったんでも思ってしまったら最後、この確証バイアスのわなにはまってしまうかもしれないのです。こうなると精緻な選考ができず、候補者の見せかけの姿にだまされてしまい、採用ミスマッチを生むことになりかねません。

採用でも起こる「ただし、イケメンに限る」

しかも、その候補者が例えば、総合商社や外資系金融などの有名企業に勤めていた場合などは、確証バイアスのわなにはまる危険性がより大きくなります。「○○商事に勤めているのだから、さぞかしすごい人なのだろう」と思い、相手が主張する話を疑いもせず、うのみにしてしまう可能性が高まります。

このように、ある対象を評価するとき、目立ちやすい特徴に引きずられて、ほかの特徴の評価がゆがめられてしまう現象を「ハロー(後光)効果」と言います。卑近な例で言えば、「ただし、イケメンに限る」。イケメンだったら、何をしても許される(有名企業に勤めているなど、目立つ特徴を持っていれば、優秀な人材でなくても高く評価される)ということです。しかし当然ながら、どれだけ有名企業に勤めていても、個人の能力はさまざまです。企業が求めるのは優秀な人材であり、格好いい属性の人材ではありません。

まずは、面接官が候補者の「人物仮説」を作る

ダメ面接官は、情報の集め方が下手だったり、パーソナリティーに関するフレームワークが少なかったりするために、候補者が一体どういう人物でありそうかという「人物仮説」を作ることが苦手です。そもそも人間はとても複雑ですから、多少話をしただけで「この人はこういう人物だ」と簡単に言えるものではありません。ダメ面接官が「人物仮説」を作るのが苦手でも不思議ではないのですが、彼らは目の前の応募者について決定的なイメージが湧かない「曖昧な状況」に耐えられなくなると、早く明確なイメージを得たいあまりに、候補者に「自分自身のことをどう分析しているか」と聞いてしまいます。しかし、その分析こそが面接官の仕事であり、それを相手に委ねてしまうと、「確証バイアス」×「ハロー効果」のわなにはまる可能性が高まります。

まずは相手に頼ることなく、「曖昧な状況」に耐え、拙速に答えを探そうとせずに質問を続け、自分の手で「人物仮説」を作らなければなりません。自己PRで強みや弱みなどを聞くのはその後がよいでしょう。そうすれば、確証バイアスのわなにかかることなく、面接官が作った人物仮説と、候補者自身の自己認知がどれだけすりあっているのか、あるいはギャップがあるのかがわかります。これが募集ポジションの人物要件に合うかどうかの判断材料となります。

初期段階の面接で志望動機を聞いても意味がない!?

選考フロー初期段階の面接で聞く志望動機も、場合によってはあまり意味がありません。こちらから送ったスカウトに対して応募してくれた方や、同時に複数の企業の選考を受けていて自社はそのうちの一社という候補者は、そもそもまだ自社をはっきりと志望していない可能性が高く、「少し興味があるだけ」ということが大半でしょう。そのような候補者に志望動機をことさら詳しく聞いても、中身のある話はあまり出てきません。「貴社の○○事業が社会に提供している価値にひかれました」という具合に、誰でも言えるような自社の事業説明を聞くのがオチです。それでは候補者の人となりはわかりません。

志望動機よりも「選社基準」を聞こう

選考フロー初期段階の面接では、志望動機よりも「選社基準」を聞くほうが有益な情報を得られると思います。「なぜ当社?」ではなく、「どのような基準で企業や仕事を選んでいるのか?」を聞くわけです。そうすれば、無理やり自社の事業内容にこじつけた話ではなく、候補者自身の価値観やキャリア観などを聞き出せます。結果、面接する側としても意味のある情報が手に入るのです。さらに、「なぜそういう価値観を持つようになったのか?」も重ねて質問すれば、候補者のこれまでの人生を聞くことができ、より候補者のパーソナリティー理解に役立つでしょう。

意見」ではなく「事実」を拾う

以上のように、最初にとりあえず自己PRや志望動機を聞くというのはあまりお勧めしません。ポイントは、面接では「意見」ではなく「事実」を聞くべきということ。これは採用面接の基本姿勢です。自己PRも志望動機も基本的に客観的事実ではなく、応募者の主観的な意見です。主観的な意見は極端な話、「なんとでも言える」わけですから、こればかり聞いていると候補者の本質を見誤ってしまいます。

候補者が「どう思っているか」ではなく「何をやってきたか」。これを聞くことを念頭において面接を行うことで、印象に左右される度合いが減り、面接の選考精度は高まるはずです。

著者プロフィール: 曽和 利光 

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リクルート、ライフネット生命、オープンハウスと、業界も成長フェーズも異なる3社の人事を経験。現在は人事業務のコンサルティング、アウトソーシングを請け負う株式会社人材研究所の代表を務める。

編集:高梨茂(HRレビュー編集部)

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編集部より:この記事はビズリーチ運営のオウンドメディア「HR review」の人気連載「ダメ面接官の10の習慣」を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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