日本証券アナリスト協会が発行する証券アナリストジャーナル(2016年4月号)に大手証券会社のアナリストのトップの方が、興味深いコラムを書いています。株式調査業務に関わる「アナリスト」の存在意義についての個人的論考です。
株式の個別銘柄を分析して、インデックス(市場平均)よりも高い運用成績を目指すのがアナリストの役割ですが、結果は芳しく無いようです。
公的年金ではスマートベータと呼ばれる、株主資本、キャッシュフロー、利益、配当といった単純な市場平均ではない指標で評価し、機械的に銘柄を選択していく運用方法が、2013年末から採用されたそうですが、それ以降の日本株ファンドの運用成績をインデックスと比べてみると
スマートベータ +3.6%
ハイリーアクティブ +3.4%
クオンツアクティブ +1.3%
伝統的アクティブ -3.2%
となりました。伝統的アクティブというのが、アナリストが個別の銘柄を選び出し、市場平均を上回ろうとするアナリストの価値が問われる運用方法です。短期間のデータだけで判断するのは危険ですが、伝統的アクティブ運用の成績は芳しくありません。
スマートベータは、今や欧州の機関投資家の40%、米国の20%に達するくらい資金が集まっています。
更に、アナリストの価値を無くしてしまうのではないかという脅威は、フィンテックにあります。
ロボアドバイザーと呼ばれる、アルゴリズムに基づいて人間ではなくコンピュータのデータが資産配分や投資商品を決定するサービスが、日本の個人投資家にも本格的に提供される体制が整ってきました。コスト面でも人件費がかからない分、ランニングコストは低くなりますから、投資信託同様、資産運用において「人の手」を借りない方法が優位になっていく可能性が高まっています。
筆者は、アナリストが生き残る道として「まだ起こっていないこと」を論理的帰結として予測できることを挙げています。しかし、そのような正しい「予知能力」を持ったアナリストが、世の中にたくさん存在しうるのでしょうか?私は懐疑的です。
国内では規模を追求した運用会社間の合併が続くことが予想されます。アクティブ運用からインデックス運用、あるいはスマートベータ運用へのシフトも続き、手数料率も低下傾向にあります。
ファンドマネージャー、アナリストといった仕事は、無くなることはありません。筆者の言う通り、クリエイティブ予測ができる人たちは、価値を提供し続けられるからです。しかし10年後には、その数は、随分減っているのではないかと予想しています。
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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年4月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。