4月発行(3月募集分)の個人向け国債の発行額が前月に比べて大幅に増加した。財務省のサイトにある個人向け国債の発行額の推移によると、固定3年が3月発行分の365億円から4月発行分が418億円に、固定5年は同311億円から1117億円に、そして変動10年は同1659億円から2467億円に増加した。
日銀のマイナス金利政策の導入により、10年国債までの利回りがマイナスとなっているなか、この個人向け国債に関しては最低保証利率の0.05%が設定されている。このため、4月発行分の固定3年、固定5年の利率は最低の0.05%となり、変動10年の初期利子も0.05%となっていた。
2003年に発行がスタートした個人向け国債はピーク時には2兆円を越す販売額となっていたが、国債の利回りの低迷により販売額は落ち込み、昨年12月は3種類の合計で729億円と1000億円を割り込むこともあった。国債利回りは今年に入りさらに低下し、利率の面での魅力はさらに薄れていたが、日銀のマイナス金利の導入で状況が変わった。
日銀のマイナス金利の導入により、預貯金金利が大きく引き下がった結果、個人向け国債の最低保証利率の0.05%が魅力的に映るようになったのである。これもあってか証券会社なども積極的にキャンペーンなどを張ったことで販売額が増加したものと思われる。
個人向け国債は国債であるため信用度は高い上に、ここまで利回りが低下してしまうと今後の状況次第では国債の価格が大きく動く懸念があるがその価格変動リスクもなく、1年経過すれば売りたいときに財務省が買ってくれるため流動性リスクもないという、かなりリスクの低い金融商品である。さらに変動10年に至っては、途中で長期金利が上昇するとそれに応じてもらえる利子が増える仕組みになっている。
財務省は2016年度に印刷する1万円札を前年度より1.8兆円分多い12.3兆円分とする計画を決めたと報じられた。これは日銀のマイナス金利により、お札を使いたい人が増えた、というわけではなく、行き場を失ったお金をタンス預金にしようとする人が増えているためである。マイナンバー制度で自分の資産を把握されたくない人はさておき、高価な金庫を買って、盗難リスクもあるタンス預金よりも、1年以上資金が寝かせられるのであれば、この個人向け国債に資金を置くというのも選択肢となるのではなかろうか。
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編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2016年4月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。