4月7日のニューヨーク外為市場では円高の流れが強まり、ドル円は一時107円67銭まで上昇し、2014年10月29日以来の108円割れとなった。しかし、8日には「場合によっては必要な措置取る」との麻生財務相の発言をきっかけに、ドル円は109円台まで買い戻された。
7日にも菅官房長官が「場合によっては必要な措置」と発言したにも関わらず、円高基調は変わらなかった。これは為替介入の権限を持つ財務大臣の発言なのでドル円が巻き戻されたというよりは、そろそろ買い戻されそうなタイミングでの麻生財務相の発言であったため、反応したような格好となったのではなかろうか。
4月14、15日にはワシントンでG20財務相・中央銀行総裁会議が開催される。麻生財務相や菅官房長官が「場合によっては必要な措置」と発言しようとも、G20も控え、さらには5月の伊勢志摩サミットも控え、自国通貨安を防止するための円売り介入は現実としてはかなり無理があろう。
今回の急激な円高の背景には、FRBの利上げが緩やかになることで日欧の中央銀行による積極的な金融緩和策よりも、基軸通貨を有する米国の中央銀行の政策に影響した面はあろう。しかし、それよりも米国サイドがFRBの利上げが意識されるなかでのドル高の動きを牽制していた側面も大きいと思われる。
日米欧の中央銀行による積極的な金融緩和策は、百年一度という非常時ならば市場を安定させ金融不安を後退させるために有効であったとしても、平時となるとそれは通貨安を意識した政策に捉えられてしまう。
日欧の異常な金融緩和は一時的にせよ、中国などの新興国経済の悪化を見えにくくさせていた面もあった。しかし、原油安が象徴するように新興国経済の悪化は顕在化しており、それが昨年8月あたりからの市場のリスクオフの動きとして現れた。
リスクオフの動きは東京市場では円高株安圧力となるため、日銀がマイナス金利政策を導入しても、ECBが追加緩和を行っても、すでに世界的なリスクオフの動きを止めることはできなかった。これはいずれ起こるであろうことが、日欧の異次元緩和で先延ばしされた分、変動幅が一時的せよ大きくなった面もあると思われる。
ただし、米国経済は緩やかな利上げを許容できるぐらいの回復地合を見せており、その分、米国株の戻りは早かったとも言えるのではなかろうか。それではどうしてなぜ、日本の株価の戻りは鈍く、円高もさらに進んでいたのか。
これは異常ともいえる日銀の金融緩和策によって持ち上げられた株価やドル円が、金融政策のイリュージョンによって実態経済以上の底上げが生じたことで、その分がそげ落ちてきたためとも言えるのではなかろうか。それを演出したのが海外投資家でもあった。
いずれ東京株式市場もドル円も落ち着きどころを探る展開が予想されるが、さらに一段安となる懸念も存在する。
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編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2016年4月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。