もう一人のレイムダック、朴槿恵大統領

熊本の地震で被害に見舞われた皆様、お見舞い申し上げます。夜間の地震で余震も続く中、救助も滞っていたと思いますが、最小限の被害で収まればよいと願っております。

さて、本文です。

「レイムダック」とは一般には政権末期に議会のコントロールが出来なくなった国家元首のことを指します。オバマ大統領はその典型であり、大統領として議会を通じて方向性が出せなくなるため、外交など個人プレイに走るケースが多くなります。キューバとの国交回復はレガシーであり、日韓のトップのぎくしゃくした関係を取り持った点に関してもオバマ大統領だからこそできた技ともいえます。が、アメリカは議会としては既に半年以上、大きな動きはなく、国民目線は次の大統領候補に熱くなり、国家の運営という点ではたまたま、国内景気が回復途上にあることが幸いしているだけで実態は停滞しています。

韓国で13日総選挙があり、即日開票されましたが、与党のセヌリ党が1議席差ながら野党第一党の「共に民主党」に敗れる波乱がありました。また野党第二党で名の売れている安哲秀代表率いる「国民の党」も議席数をほぼ倍増させ、躍進しました。実際には11名いる無所属で当選した議員がセヌリ側につく可能性があるため、ワーストシナリオは避けられますが、与党として過半数を取れず、国民から強い不満が出た形となり、セヌリ党出身の朴槿恵大統領にとっては厳しい結果となりました。

朴槿恵大統領はまだ任期を1年10か月も残しての選挙の惨敗は大統領の強い指導力に対する疑念が渦巻いていた上に昨今の北朝鮮との関係を踏まえ、国民が新たなる意識を示したとも言えそうです。確かに朴大統領にとって就任以来さまざまで困難な問題に巻き込まれました。特にボイスが強烈で感情的になりやすい国民気質を持つ同国に於いてセウォル号の沈没事故とその政府の対応には大きな批判が出ました。

経済的にもこの数年、韓国は良いところがなく、個別企業ベースでもナッツ事件やロッテの内紛、サムスンの苦悩に現代自動車の燃費偽装問題と財閥系企業で次々と問題が発覚してます。国民意識は明らかに「困惑の度合い」を強め、子供を持つ親はソウル大学→サムスンというエリートコースが全てではないと察し、多くの若者は非正規労働で低賃金のまま路頭に迷っています。

それにも拘わらず、個人攻撃で政治を紛糾させ、「好き嫌い」の色分けで嫌いな奴には徹底して苛め抜き、挙句の果てにいつでもどこでも殴り合いの喧嘩を始める国であります。血の気が多いのが逆に災いし、モノが決められなくなっているところにもってきて朴大統領が李明博前大統領の反省を踏まえ、自ら導入した「国会先進化法」は国会を完全に停滞させ、法律が通らないものにしてしまいました。

ここにきて北からは日々、脅迫のボイスが聴こえ、朴大統領を呼び捨てにして挑発します。その北まではソウルからわずか50キロです。以前から言われていたソウルの弱点であります。北の脅威に対して国民は全員が全員、戦う姿勢を見せるわけではありません。当然、北との同化を考える人もいるわけで一種の「赤化」も進みやすい状況になります。

こうなると朴大統領の指導力は増々劣化してしまい、北の思惑通りの展開になってしまうのです。

雰囲気的には日本が自民から民主に政権交代があった時の雰囲気に近いものがあるのかもしれません。国民はもはや与党政権を諦め、違う道を選択し始めたということでしょうか?しかし、日本と大きく違うのは朴大統領はまだ、2年近くも君臨するわけでその間に想定される様々な問題にどう対処していくのか、その機能を司るはずの国会の空転で紛糾することは目に見えています。

個人的にはこの時期のこの選挙結果は韓国にとっても日本を含む近隣諸国にとっても面白くない事態を想定せざるを得ないことになったと考えています。日本と韓国の間を取り持ったオバマ大統領も間もなく任期を終えます。朴大統領も厳しい運営が待ち構えているとすれば日韓のつかの間の安ど感も再び、緊張関係にならないとは言えません。

世界は民主化の動きが強まっていますが、韓国も再びその色彩を強めてくるのかもしれません。今後の韓国情勢に注目していきたいと思います。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 4月15日付より