櫻井孝昌さんの思いを継ぎたい

2015年12月4日、櫻井孝昌さんが事故で亡くなりました。その前日、「いよいよ時が来た」と喜び合ったばかりでした。

櫻井孝昌さん。
“ポップカルチャーの研究家で、日本のアニメ文化などの海外発信をめざして外務省が設けた有識者会議の委員も務めた。著書に「世界カワイイ革命」「アニメ文化外交」などがある。”(朝日新聞)。
これからその成果が活かされる、その時に。痛恨です。

櫻井さんは、国際オタクイベント協会IOEAの事務局長を務め、世界のオタクイベントをネットワーク化しました。30か国、58イベントが集う動員200万人の親日イベントコミュニティを作ったんです。偉業であります。
http://ioea.info/

2年前にぼくが書いた櫻井さん著書の評です。
この外交官数十人分に匹敵する役割を、これから担ってくれる人はいるのだろうか。
「櫻井孝昌「日本が好きすぎる中国人女子」(上) — 日本の認識不足」
http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2013/10/blog-post_7.html
「櫻井孝昌「日本が好きすぎる中国人女子」(下) — 本気度の問題」
http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2013/10/blog-post_10.html

最後に会った時、「先日、サハリンのオタクイベントに足を運び、親日コミュニティと交流してきた」と話していました。その後、「シンガポールのオタクイベントで中国オタクの進出に危機感を募らせた」と話していました。この人脈とフットワークを、ぜひ日本の政策・外交にも活かしてほしいとぼくが頼んでいた矢先でした。

櫻井さんの国際オタクイベント協会と、デジタル特区を作るぼくらのCiP協議会が連携して、国際連携を強化するプランを作ることで合意し、握手した翌日のことでした。その情熱を、ぼくらが受け継げるのか、年をまたいで考え続けています。

櫻井さんが築いてきた国際オタクコミュニティをみんなで育て、年1000万人を動員する親日ポップコミュニティを作りたい。その思いは変わりません。

「世界オタク研究所」。櫻井さんが築いてきた世界的な大学ネットワークを育て、各国のオタク研究者のプラットフォームを作りたい。その思いも変わりません。

櫻井さん一人におぶさってきたオタク外交の機能を、組織化して面的に進められるようにすることがぼくらに投げつけられた宿題だと思います。

やってみます。あちらから見ていてください。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2016年4月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。