産油国ドーハ会議、合意できず

岩瀬 昇

イランが前夜に不参加を表明したことから予測されていたことではあったが、いっさいのお化粧をせずに、素顔をそのまま晒すとは思ってもいなかった。何がしかの外交的努力の跡がみえるように、口当たりのいいコミュニケが出ると思っていたのだが。

だが、何度もいうが、なぜNHKまでが「増産凍結」の用語を使うのだろうか?

日本のマスコミは、各産油国はこれから「増産」をし、供給過剰がさらに悪化すると判断しているのだろうか?

これまで弊ブログをお読み頂いている方は筆者の見方をご理解いただいていると思うが、今回の「不合意」により変動するファンダメンタルズ(基礎的要因)はほぼない。不変だ。

唯一、イランが増産の努力を今後も続け、輸出量(供給量)が少しだけ増えるだろう、ということくらいだ。せいぜい20~30万B/Dくらいだろう。

イラン以外で大きな余剰生産能力を持つサウジは、これ以上増産をするメリットはないから、増産はしないだろう。今年度の予算に織り込んだ補助金削減による消費抑制が、これから迎える夏場の電力需要による石油需要増をオフセットするのではなかろうか。

日本のほぼ4分の1の人口を持つサウジは、日本の約半分の石油を消費している。一人あたりの消費量は約2倍だ。省エネによる消費削減の余地はまだまだある。

国内消費量を減少できれば、生産量を維持しても輸出量を増やすことができる。

一種の「余剰生産能力」であるシェールオイルのDUC(掘削済み未仕上げ)坑井の生産移行はしばらく凍結だろう。まだまだ十分な価格水準ではないからだ。一方で、財務基盤の弱いシェール企業のチャプター11(再建型倒産手続き)申請は今後も増加し、彼らの保有資産のうち、価格競争力のないシェールオイルは徐々に減産されるだろう。

昨年春に560万B/Dのピークをつけたが、シェールオイルの減産は進んでおり、最近では490万B/D程度となっている。メキシコ湾における在来型の石油開発プロジェクトがスケジュールに則り生産に移行していくので、アメリカ全体としての原油生産量はほぼ横ばいで推移しそうだが。

中国や北海の老朽化した油田の操業が中止されるなど、経済原則の基づき「高コスト油田」からの供給量は着実に減少している。

このように、供給過剰がこれ以上悪化する可能性はほぼない。IEAは、今年前半150万B/D、後半20万B/Dが供給過剰と読んでいる。

心配なのは、IEAもOPECも約120万B/D増加すると予測している今年の需要の伸びが、これらの想定ほど伸びないことだ。発展途上国の経済成長率、天候要因など不安要因はある。

基本的には、ゆっくりと需要が増えていくことによって、需給バランスは改善する、リバランスが進んでいくと判断できる。

だが、ファンダメンタルズに大きな変化がなくても、市場はふたたび激しい乱高下の季節を迎えることになろう。市場参加者の不安感は払拭されないからだ。

ボラティリティが高まることは、オイルトレーダーにとってもヘッジファンドにとっても望むところだ。6月2日の次回OPEC総会に向けて、彼らはさらに大活躍をすることになろう。

繰り返しになるが中長期的には、在庫の問題もあり、ゆっくりとリバランスが進んでいくものとみられる。価格の乱高下を繰り返しながらも、ゆっくりと上昇基調に転ずる機会を探っていくことになろう。

大手国際石油会社などが昨年、今年と資本投資を大幅に減少していることは、将来の供給量に赤信号を灯している。人々の心の奥底に、この「心配」が根づいているので、現在の低価格が「ニューノーマル」とは考えられていないのだ。

「ニューノーマル」と考えられるようになったら、大手国際石油会社のM&Aがもっと盛んに行われることになるだろう。

一般庶民としては、地政学リスクの暴発は避けたいものだが、いつか、どこかで発生するような、そんな嫌な予感がしてならない。

みなさん、どう思われますか?


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年4月18日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。