避難所間格差を埋めるためにも、もっとクラウドの活用を

大西 宏

阪神淡路大震災でも、東日本大震災でも問題になったのが、避難所間、また避難所内での支援の格差です。飲料水や食料が十分なところもあれば、不足している ところ、また必要としている救援物資が、必要な人のいる避難所に届くとは限りません。やはり今回の熊本地震でもやはりそんな問題が起こっているようです。


【熊本地震】おにぎりに「1時間並んだ」 支援物資が避難所に行き届かない背景

そういった支援部物資の調整を行う市町村の職員の人数にも限りがあります。また錯綜した現場では、情報収集・整理も思うようにはかどりません。

もちろん、これまでの震災で起こった避難所での問題をできるだけ解決しようと、各地方自治体で避難所マニュアルがあります。当然、今回の被災した熊本県も、県下の市町村に向けた「避難所運営ガイドライン」や「避難所運営マニュアル作成モデル」などが作成されています。

それをちらっと見たところ、避難者リストをPCで作成というのはありましたが、ネットなりクラウドの活用については触れられている箇所が見つかりません。

しかし、本来は、どんな支援物資がどれほど欲しいのか、またどんなことを手伝ってもらいたいボランティアが何人ぐらい必要なのかの調整は、クラウドが得意とするところです。欲しい人と提供する人を結んで、需給を調整する「オンデマンド」の世界です。

避難所が、PCでつながらなくとも、スマホを持っている人がいれば、避難所と支援物資の供給拠点やボランティア・センターなどとの情報のやりとりが人手をかけずにできるはずです。高齢者がほとんどでネット活用が困難な避難所にはそれこそ、市町村の職員なり、ボランティアを派遣すればと思います。

そのひとつのアイデアの原型がアマゾンの「ほしい物リスト」ではないでしょうか。避難所でアマゾンのアカウントを作成し、「ほしい物」をどれだけ欲しいかをリストに登録すれば、全国のアマゾンユーザーがそれを見て、商品を注文し、避難所に届けるというものです。

東日本大震災の際に、アマゾンの技術陣が発案し、システムを構築したようです。

被災地への配送を開始した、というアマゾンの発表を見た技術者が もう一歩踏み込んで「欲しい数量だけ支援」という形を発案。 途中で「中の人」や「マンガ家先生」も巻き込んで「米国社長」まで たどりつき、48時間でアマゾン裏方技術陣がシステム構築しました。
2012年現在、支援総額3億円を越えた事を「彼」は知りません。

始まりは、たった1つのツイートだった 被災者支援用Amazonほしい物リスト誕生の瞬間 – まとめ
Amazon.co.jp: ほしい物リスト作成方法

上田涼子さんという方がフェイスブックでアマゾンの被災者支援の新しいリストのリンクをつくってくださっています。
【引き続き拡散希望!!】 Amazonほしい物リストに 新しい送り先を追加しました。 …

もちろん、こういったシステムは「官」に任せるといい結果がでるとはとうてい思えないので、それぞれの自治体が民間のシステムと提携して、いざというときに活用するというほうが賢明だと思います。アマゾンと徳島県の間では支援協定が結ばれているようです。楽天でも、Yahoo!でも、きっと協力するのではないでしょうか。
アマゾン ジャパン、徳島県との間で災害発生時における支援協定を締結

もちろん、避難所への交通インフラが遮断されていれば別ですが、支援を必要とする避難所と、支援する側をうまくネットのシステムでむすぶことが、避難所間の格差を埋めることにも役立つのではないでしょうか。