労働市場に暗雲?米1-3月期決算で相次ぐリストラ発表

米1-3月期決算発表が本格化し、ファックトセットによると22日までにS&P500構成企業のうち26%がリリースしました。そのうち、1株当たり利益が市場予想を上回った割合は76%で、5年平均の67%を超えています。ただし売上になると話は別で55%にとどまり、5年平均の56%にわずかながら届かず。やはり、今回の決算は事前予想通り芳しくないもようです。

決算の数字より、懸念すべきはこの数字です。

インテルが決算発表と合わせて明らかにしたのが、人員削減数でした。2017年までに1万2000人をリストラする方針で、従業員全体の11%に及びます。調査会社IDCによると、1-3月期のパソコン出荷台数が前年同期比9.6%減の6480万台だったように、PC需要の低下が打撃となったことでしょう。

2015年からのトレンドとして、原油関連も見逃せません。油田サービスのシュルンベルジェは、1-3月期に8000人の人員削減に踏み切った後に5500人の契約社員を正社員へ転換させつつ、実質2500人相当の空席が出来上がった格好です。ハリバートンは1-3月期、リストラで6000人もの大鉈を振るいました。原油関連の輸送および同セクターに関わる設備投資が削減したため、鉄道会社も煽りを受けています。例えばノーフォーク・サザンは貨物量の減少を背景にテネシー州ノックスビルの操業削減をはじめ、135人の人員削減に踏み切ると発表しました。決算発表の開幕を飾ったアルコアも1-3月期に600人を削減した後、年内400人を追加でリストラする方針です。そのほかボーイングがサウスカロライナ州でエンジニア職200人、自動車大手フィアット・クライスラーが1300人との報道が流れていました。

米新規失業保険申請件数1973年以来の低水準を更新しており、リストラの荒波を全く感じさせません。米4月雇用統計のサンプル週も、いたって好調そのもの。ただし労働指標は経済に対し遅行指数であり、今後減速しないとも限りません。しかも現状の雇用統計で牽引しているセクターが娯楽・宿泊、教育・ヘルスケア、小売であり、低賃金の職が多いということも事実。反対にリストラ候補の職は比較的高所得と言え、国内総生産(GDP)の7割を個人消費が担うなかで、このままでは仮に雇用統計が底堅さを示しても成長率は低空飛行を続ける可能性が残ります。

4月26~27日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)では6月利上げの選択肢を残すのでしょうが、2015年10月FOMCのようなあからさまな利上げサイン点灯は回避するでしょう。

(カバー写真:Senator J. Kalani English/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年4月26日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。