電波でなければ規制もない!?「スマホで“朝生”」

田原 総一朗

スマホで朝生放送開始から29年間、僕が司会をしてきた「朝まで生テレビ!」(テレビ朝日)が今年、新たな時代を迎えることになった。ネットテレビ局「AbemaNews」の開局スペシャルとして、4月18日午後9時から3時間の生放送を行ったのだ。タイトルは「スマホで“朝生”」。

インターネットでの動画放送といえば、ニコニコ動画などがある。だが、この「AbemaTV」は会員登録の必要もない、24時間無料放送の画期的なテレビ局だ。

スマホで視聴した人たちの声によると、画像も音声も安定しており、地上波の放送と変わらなかったという。

今回のテーマは、「人工知能、ロボットが働く未来…ド~なる仕事、ド~するライフスタイル?!」である。堀江貴文さん、夏野剛さん、成毛眞さんら、IT系企業の出身者や、起業家の駒崎弘樹さん、ウーマンラッシュアワーの村本大輔さん、国際的に活動する社会起業家の牧浦土雅さんなど、若手を中心に、個性的な面々が集まってくれた。

「人間がAIに取って代わられる職業は何か?」という話題に対する堀江さんの指摘がたいへん興味深かった。「経営者こそAIに取って代わられやすい。リスクを恐れ、リスクを取らないからだ」と言うのだ。

人間はAIと違って「感情がある」。たとえば、介護や看護といった仕事は、この感情を必要とする。だから、こういう仕事では、AIが人間に取って代わることは難しいだろう。だが、この感情が悪い方向に働く仕事がある。

実は、経営判断というものは、感情が悪い方向に働くそうだ。失敗したらどうしようという恐れから、新しいチャレンジを避けたりする人は、無難な経営しかできなくなるのだ。「AIに経営判断させたほうがいいんじゃないか」という結論に至るのは、それが理由だ。もちろん100%あてはまるわけではない。それでも、経営者はこの言葉に耳を傾けてもよいのではないだろうか、と僕は思った。

このように、出演者たちは常識にしばられず、とてものびのびと話しているように感じた。僕自身も、この番組の議論をとても楽しんだ。

僕は1964年の東京12チャンネル(現テレビ東京)開局と同時に入社、ずっとテレビの世界で生きてきた。フリーになった後も含めて、テレビの世界を中心に生きてきたのだ。

tahara情報発信の場といえば、かつては新聞や雑誌、書籍といった印刷物であった。そしてラジオ、テレビがそこに加わった。だが、インターネットが登場して、情報の動きかたが変わった。人びとは電波を使わずとも、SNSなどで自由に情報発信できるようになった。もちろん、それに伴ってさまざまな問題も起きているが、こうしてネットで生放送ができるようになった現代は、すばらしい時代だと僕は思う。

「電波」は使える枠が決まっているからこそ、監督官庁が必要だ。そのために「電波法」があり、規制も受ける。高市大臣のあのような「発言」も生まれた。しかし今回のような番組が成立するなら、これまでの規制にとらわれることはなくなる。「テレビ新時代」だ。それを改めて実感し、僕はワクワクしてしまったのである。


編集部より:このブログは「田原総一朗 公式ブログ」2016年4月28日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。