露ガスプロム前年比5倍の利益計上、配当論議紛糾か

手元のメモによると2015年は次のように、スーパーメジャーにとっても困難な年だった。

純利益  前年比

エクソンモービル 162億ドル ▲50%

シェブロン     46億ドル ▲74%

シェル       38億ドル ▲80%

BP        ▲65億ドル (38億ドル黒字)

ルーブル安と優遇税制により「好調」だと伝えられていたロシアの石油ガス業界だが、チャンピオンであるガスプロムの純利益は、なんと前年比約5倍の122億ドル(7870億ルーブル)となった、とFTが伝えている。”Gazprom profit gain raises spectre of dispute over dividend”(April 28, 2016 11:52pm)という記事で、さらなる要点は次のとおりだ。

先週ロシア政府は、Gazpromを含む8大国営会社は年間利益の50%を配当すること、という内容の法律を制定した。油価低迷による財政赤字対策の一つだ(予算は50ドル/バレルを前提としている)。

世界最大のガス会社であるGazpromはすでに、取締役会で7.4ルーブル/株の配当をすることを決議し提案している。122億ドル(7870億ルーブル)の純利益の50%は、2倍以上の16.6ルーブル/株の配当に相当する。

Gazpromの副財務責任者であるIgor Shatalov氏は、5月に取締役会を開催し、支配株主の決定を踏まえ配当問題を再考するだろう、と投資家に対する説明会で述べている。また、先週立法化された「利益の50%配当」法には、これから3年間の利益見込みだとか、新規投資計画や新規借入能力水準などを考慮する、との付帯条件がついているので、ロシア最大の納税者の一社であり、また最大の雇用主の一社であるとの立場も踏まえて、最終的な配当額が決められることになろう、一方で、Gazpromは1兆3600億ルーブル(約211億ドル)の現金資産を保有しており、これも「配当水準」決定に重要な要因となろう、としている。

なお、欧州勢の反対により断念した、黒海を横切るSouth Streamガスパイプラインプロジェクトでは、560億ルーブル(約8億7000万ドル)の減損処理をしているとのことだ。

うーむ。

2014年12月、原油価格の大幅下落が始まったばかりのころ、プーチン大統領は「ロシア経済は2年間は耐えられる」と言っていたが、はたしてどの程度抵抗力があるのだろうか?


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年4月29日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。