4月28日に発表された3月の全国消費者物価指数は日銀の物価目標となっている総合で前年同月比マイナス0.1%、ベンチマークであり日銀の展望レポートでの見通しにも使われる生鮮食品を除くコア指数は同マイナス0.3%、食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合は同プラス0.7%となった。日銀が発表した総合(除く生鮮食品・エネルギー)、いわゆる新コアコアは前年比プラス1.1%と前月と同じ数字となっていた。
コア指数が前年比マイナスとなったのは昨年10月のマイナス0.1%以来となる。原油価格の下落により、ガソリン、電気、代都市ガス代、灯油の下落幅が拡大し、エネルギーによる下げが大きく影響し、食料や家庭用耐久財や宿泊料なども押し下げ要因となった。
4月の東京都の消費者物価指数は、総合がマイナス0.4%、コア指数がマイナス0.3%、コアコアがプラス0.6%となっており、4月の全国消費者物価指数も低迷が予想される。
ただし、原油価格はWTIでみると2月11日を底にして上昇トレンド入りしており、国内のガソリン価格は7週連続の値上がりとなるなどしていることで、徐々にではあるが原油価格下落による物価の下押し圧力は後退してこよう。
しかし、今年に入ってからの円高圧力は強まっており、4月12日にドル円は107円台まで下落している。そこからいったん111円台まで戻しているが、ここにきて再び円高基調を強めるなど円高による物価の下押し圧力は残る。余程のピッチでの円安でもない限りは、物価については下押し圧力が残り、前年比での大きな戻りは期待できない。
また、4月13日に発表された企業物価指数によると、2016年3月の国内企業物価は前年比マイナス3.8%となった。こちらも原油安と円高による影響が輸入物価を経由して強まっている。川下の最終財への波及が強まり、最終財の物価上昇が鈍ればCPIにも波及することになる。
日銀の物価目標は消費者物価指数の前年同月比でのプラス2%である。その目標からますます遠ざかりつつある。かといって金融政策で原油価格をどうこうできるわけでもなく、追加緩和で円安に誘導できるとは限らない。そもそも金融政策で直接、物価は動かせないことを日銀は自ら証明してしまった形ではあるが、掲げた物価目標を下ろすこともできず、ひたすら異次元緩和を継続せざるを得ない状況に陥っている。これはこれで将来の出口に向けた潜在リスクを大きくさせることにもなろう。
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編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2016年5月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。