ワーズオートが発表した米4月新車販売台数は、年率換算で5.2%増の1732万台と市場予想の1740万台に届かなかった。オートデータが発表した米4月新車販売台数は、前年同月比3.6%増の150万6977台。前月の159万5483台からは、鈍化している。営業日は2015年4月と変わらずだったが、年率は鈍化の兆しをみせる。米1-3月期のシニア融資担当者調査では自動車ローンの融資条件の引き締めより緩和寄りの回答が多かったものの、需要の追い風となっていない。なお2015年9~11月に2000年以来となる1800万台を突破したため、2015年は前年比5.7%増の1,747万台と2000年に樹立した1,735万台を突破し過去最高を塗り替えた。
メーカー別では、ゼネラル・モーターズ(GM)とフォードが予想以下に終わった。一方でフィアット・クライスラー、日本車御三家は市場予想を上回る好成績を残すなど、全体的にはまちまち。車種では、引き続きトラックをはじめスポーツ多目的車(SUV)が売上に寄与した。ガソリン価格は2月に一時1.724ドルと2004年3月以来の安値をつけた後、4月に一時2.162ドルまで上昇した割に、好調を保つ。
ケリー・ブルー・ブックによると、4月の平均販売価格は前年同月比1.9%上昇の3万3865ドル(約360万円)だった。3月の2.0%、2月の2.2%には届かず。前月比では0.2%上昇、3月の横ばいから上向いた。メーカー別の平均価格を前月比でみると、排ガス不正問題に揺れるVWが0.9%上昇、3ヵ月ぶりに反発した。同メーカーは2015年9~11月の下落を経て、同年12月と2016年1月に3%近い上昇を示し、合わせて販売台数も2桁減を記録していた。一方でフォードが0.5%下落したほか、GMも0.3%と米国メーカーや、トヨタと日産も0.2%ずつ下落していた。前年比ではVWのみ1.0%下落、前月の4.6%からは下げ幅を縮めている。
(出所:Kelley Blue Book)
2016年の新車販売台数につき、自動車価格情報サイトのトゥルーカーは「1800万台」を予想する。ただし、伸び率は3%台とし、2015年の5.7%を下回る見通しだ。以下、米国をはじめメーカー別動向。
GMは前年同月比3.5%減の25万9557台となり、市場予想の1.7%減より下げ幅を広げた。前月は増加したものの、今回再び減少に転じている。小売販売台数では3.3%増の20万656台で、12ヵ月連続で増加した。新車販売台数での4大ブランド別では、全て全滅。年初から3月まで2ブランドで増加していた。小売販売台数では、4ブランドのうちキャデラック以外で増加した。新車販売台数の詳細は、以下の通り。
・GMC 0.1%減の4万7159台、前月から減少に反転
→小売販売台数は4.6%増の3万9387万台と、2004年以来で最高を達成。SUVの「シエラ」が14%増と単月で最高を遂げたほか、「キャニオン」も23%増、「ユーコン」も8ヵ月連続で前年同月比プラスを保つ。一方で、「アルカディア」が下押しした。
・シボレー 2.3%減の18万3442台、3ヵ月ぶりに増加に反転した前月から減少に戻す
→小売販売台数は4.5%増の13万4562台で、12ヵ月連続で増加しただけでなく単月では2006年以来で最高。新型の小型車「マリブ」が年初来の販売台数で2008年以来で最高を遂げた。トラックでは「コロラド」が55%増だったほか「サバーバン」が16%増、「シルバラード」も14%増と寄与した。ただし「エキノックス」や「クルーズ」が弱い。
・ビュイック 2.8%減の1万7720台、2ヵ月連続で減少
→小売販売台数は13.3%増の1万6331台で、年初来では2005年以来で最高。「アンコール」が39%増と支えた。半面、「ラクロス」が足を引っ張った。
・キャデラック 28.9%減の1万1236台、2ヵ月連続で減少
→SUVで売れ筋の「SRX」が53.8%減となった上、その他も軒並み落ち込んだ。
日本とインド市場からの撤退を決定したフォードは前年同月比3.6%増の23万1316台となり、市場予想の3.8%増に及ばなかった。とはいえ10年ぶりの高水準に到達。2大ブランド別では、前月に続きそろって増加した。詳細は、以下の通り。
・フォード 3.3%増の22万1540台、2ヵ月連続で増加
→アルミ製ボディのトラック「Fシリーズ」が12.6%増の7万774台と、2ヵ月連続で7万の大台を突破した。そのほか、SUVも好調で「エクスプローラー」も22.3%増の2万283台となり、SUVの販売台数では22%増の6万5474台と過去最高を記録している。一方で「フォーカス」が11.7%減を示すなど、小型車が弱い。
・リンカーン 20.2%増の9776台、5ヵ月連続で増加
→新型「MKX」が93.9%増と、5ヵ月連続で大幅増を迎えた。
フィアット・クライスラー・オートモビルは前年同月比5.6%増の19万9631台となり、市場予想の4.3%増を上回った。前年比プラスは73ヵ月連続で、単月ベースでは2005年以来の高水準。5大ブランド別では1−3月まで3ブランドの増加を経て、今回は2ブランドへ減少した。詳細は、以下の通り。
・ジープ 17%増の8万4298台、31ヵ月連続で増加
→単月ベースでは、2013年11月以来続く過去最高をたどる。新しく投入された「レネゲード」を含め6車種中、5車種が増加。「チェロキー」以外が増加している。
・ラム 12%増の4万5810台、5ヵ月連続で増加
→単月では、2005年以来で最高を達成した。「プロマスター」、「プロマスター・シティ」がそれぞれ12%増となり、全体を支えた。
・ドッジ、3%減の4万3575台、7ヵ月ぶりに減少
→主力の「キャラバン」が116%増と勢いを維持したものの、「ジャーニー」や「チャージャー」がそれぞれ44%減、9%減と軟調だった。
・クライスラー 18%減の2万2843台、3ヵ月連続で減少
→ミニバン「タウン・アンド・カウンティ」が82%増だった一方、セダン「200」が60%減だった。
・フィアット 19%減の3045台、4ヵ月連続で減少
→新型「500X」が伸びたものの、「500」や「500L」がそれぞれ40%減、63%減だった。
日本車では、トヨタが3.8%増の21万1125台と市場予想の3.6%増から加速し増加に転じている。ブランド別では、トヨタとレクサスがそろって減少した。営業日ベースでは、全体で9.9%減だったという。小売販売台数では3.8%増の21万1125台となり、ナンバーワンに躍り出た。詳細は、以下の通り。
・トヨタ 5.0%増の18万6243台、前月から増加に反転
→引き続きSUVやトラックが牽引し、日本では来春に販売・生産を打ち切る計画のSUV「RAV4」が31.6%増と6ヵ月連続で単月での記録を塗り替えた。トラックの販売も絶好調で、初めてSUVの販売台数を抜き去り単月で過去最高を記録した。もっとも、主力のセダンが伸び悩み「カムリ」は0.1%減の3万4039台、「カローラ」は0.4%増の3万2111台と辛うじて増加した。
・レクサスは3.8%減の2万4822台となり、2ヵ月連続で減少
→SUVやトラックは底堅く、4車種中3車種で増加を果たす。反対に乗用車部門は軒並み減少しており、6車種中のうち全てが減少した。そのうち4車種が2桁減だった。
ホンダは前年同月比14.4%増の14万8829台となり、市場予想の10%増を超えた。ブランド別では、1−3月に続きホンダが増加し、アキュラも2ヵ月連続で増加した。詳細は、以下の通り。
・ホンダ 10.9%増の13万2623台、4ヵ月連続で増加
→単月で最高を達成。セダンが好調を維持しており、新型「シビック」が24.5%増と5ヵ月連続で2桁増と全体を支えた。「アコード」も15.1%増と好調。ただしSUVの「CR-V」は1.8%減の2万8913台と2ヵ月連続で減少した。
・アキュラ 9.0%増の1万6206台、2ヵ月連続で増加
→「RDX」が48.7%増と2桁増を維持し、「MDX」をはじめとした減少を補った。
日産は12.8%増の12万3861台となり、市場予想の11%増を追い越していった。2大ブランドは、そろって増加。詳細は、以下の通り。
・日産 13.6%増の11万3429台、7ヵ月連続で増加
→3月に続き、単月で過去最高に。SUV・トラックで主力の「ローグ」が6.5%増の2万3173台と堅調なペースを保ったほか、「ムラノ」が51.2%増の6232台と支えた。新型のセダン「マキシマ」も3ヵ月連続で3桁増に達し、169.6%増となる。主力の「アルティマ」も28.8%増と快調な走りをみせた。
・インフィニティ 4.5%増の1万432台、2ヵ月連続で増加
→SUVの「QX60」が17.0%増と2ヵ月連続で増加し、セダン「Q50」にいたっては6倍増に達した。
その他の海外メーカーでは、フォルクスワーゲン(VW)が9.7%減の2万7112台だった。排ガス不正が発覚した2015年9月、および同年10月は値下げ効果もあって小幅な増加にとどまったが、同年11月にガソリン車にも火種が及んだ影響からか5ヵ月連続で減少。ただしアウディが5.8%増と増加トレンドをたどり、グループ全体では4.4%減へ下げ幅を縮めた。ヒュンダイは8.5%減の6万2213台と3ヵ月ぶりに減少、キアは6.1%増の5万6508台だった。
自動車メーカーからディーラーへの1台当たりインセンティブは前年同月比13.3%上昇の3021ドルで、3月の10.4%から加速した。前年比での伸び率はフィアット・クライスラーが最も高く25.1%上昇、次いで排ガス規制に揺れるVWが16.6%、高級車レースで出遅れ気味のBMWが15.0%と続く。一方でスバルは21.4%低下、ホンダも7.5%低下、ヒュンダイも2.4%低下、高級車市場でトップを干た走るダイムラーも、0.2%低下した。
(出所:Truecar)
高級車部門別ランキングは、以下の通り(%は全て前年比)。今回、高級車御三家のメルセデス・ベンツ、レクサス、BMWがトップ3を維持した。1月に3位の座をビュイックに譲ったBMWはインセンティブを引き上げ販売台の維持に努めた結果、今回はレクサスを抜いて2位に躍り出た。
1位 メルセデス・ベンツ 3.0%減の3万1825台
→1−3月に続き、首位を堅持した。年初来でも0.7%減ながら、11万4834台でトップに君臨している。2015年は、4.7%増の37万2,977台でトップ。2013年は1位だったが、2014年ではBMWに1位を明け渡していた。
2位 BMW 7.4%減の2万4951台
→1月はまさかのトップ3圏外だったが、2−3月の3位を経て今回は2位に浮上した。年初来では9.4%減の9万5564台で、引き続き3位。2015年は1.8%増の34万6,023台で、首位の座を宿敵メルセデス・ベンツに明け渡していた。2014年では1位、2013年は2位だった。
3位 レクサス 3.8%減の2万4882台
→1−3月の2位から、今回はBMWの追撃を受け3位にダウンした。年初来では3.8%減の9万9103台で2位を維持している。2015年は10.7%増の34万4,601台で3位。2011年まで11年間連続で首位を飾ったが、東日本大震災後に順位を落とし2014年、2013年、2012年に続き3位にとどまる。
4位 ビュイック(GM)2.8%減の1万7720台
→前月の5位から4位へ持ち直した。年初はBMWを振り切って3位へ急伸したものの、以降はトップ3圏外へ戻す。年初来では4.8%増の7万2007台 と4位を保った。2015年は2.6%減の22万3,055台で4位だった。
5位 アウディ(VW)5.8%増の1万7701台
→VWショックに揺れるなか、前月の4位から5位に落ちた。ただ一時期の7位からは回復している。年初来では5.0%増の5万9761台で、5位を維持。2015年は11.1%増の20万2,202台で、5位だった。。
6位 アキュラ 9.0%増の1万6206台
→前月と変わらず。年初来では0.8%減の5万4081台で6位。2015年は5.6%増の17万7,165台で6位に収まっていた。
7位 キャデラック 28.9%減の1万1236台
→前月の8位から、7位へアップした。年初来では11.5%減の4万6869台ながら、7位を堅持している。2015年は2.6%増の17万5,262台で、7位だった。
8位 インフィニティ 4.5%増の1万432台
→2月まで8ヵ月連続で8位を経て、3月に続き7位。年初来では、1.7%減の4万3092台で8位となる。2015年も13.8%増の13万3,498台で8位だった。
最新版:自動車メーカー別のシェアの1位はGM、2位フォード、3位トヨタで変わらず。1位と2位の左は、前月のわずか0.1%から再び拡大した。VWは1−2月こそスバルに8位の座を明け渡したが、前月に続きスバルと同率の8位ヘ浮上した。
(出所:Good Car Bad Car)
新車販売台数:モデル別ランキング(%は前年同月比)で、今回はフュージョン(フォード)とシビック(ホンダ)が圏外に消えた。
1位 Fシリーズ(フォード)12.6%増の7万774台、前月も1位
2位 シルバラード(GM)8.7%増の4万9990台、前月も2位
3位 ドッジ ラム(フィアットクライスラー)8.3%増の4万1079台 前月は圏外
4位 シビック(ホンダ)24.5%増の3万5331台、前月は6位
5位 カムリ(トヨタ)0.1%減の3万4039台、前月は4位
6位 カローラ(トヨタ)0.4%増の3万2111台、前月は7位
7位 アコード(ホンダ)15.7%増の3万1526台、前月は8位
8位 Rav 4(トヨタ)31.6%増の3万1526台、前月は10位
9位 CR-V(ホンダ)1.8%減の2万8913台、前月は圏外
10位 アルティマ(日産)28.8%増の2万8484台、前月は5位
SUV版:新車販売台数、ブランド別ランキング(%は前年同月比)
1位 RAV 4(トヨタ)31.6%増の3万152台 前月も1位
2位 CR−V(ホンダ)1.8%減の2万8913台、前月は4位
3位 エスケープ(フォード)7.2%減の2万3920台、前月は2位
4位 エクスプローラー(フォード)25.0%増の2万3546台、前月は5位
5位 ローグ(日産)6.5%増の2万3173台、前月は3位
6位 エキノックス(シボレー)28.6%減の2万607台、前月も6位
7位 ジープ・ラングラー(フィアット・クライスラー)0.8%増の1万9003台、前月は9位
8位 ジープ・グランドチェロキー(フィアット・クライスラー)12.4%増の1万8021台、前月も8位
9位 ジープ・チェロキー(フィアット・クライスラー)7.4%減の1万7667台、前月は7位
10位 ハイランダー(トヨタ)9.3%増の1万5037台、前月も10位
(カバー写真:Car And Driver)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年5月5日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。