トランプ氏はなぜ候補指名を確保したか?

トランプ氏が共和党の候補指名を確保しました。多くの国民、メディア、専門家が予想しなかったことです。そんなトランプ氏ですが、私は彼の立ち位置に一定の強みを感じていました。

例えば15年8月10日付ブログには「大統領選は長丁場ですのでこれからかなり面白い話題を振ってくれることでしょう。少なくとも今後1年ちょっとはアメリカのゴールデンアワーを独占できるほどの影響力を持つことは確実です。トランプ氏が頑張れば共和党は焦り、クリントン氏は笑うとされていますが、92年の時と経済、社会環境が違いますのでクリントン氏も焦る時が来ないとも限りません。それぐらい、今、アメリカは悩める時代に突入しているように見えます」と指摘しています。

また、8月28日付には「トランプ氏の人気を作ったのは民主、共和の政治そのものである」とし、更に本年1月27日付に「今、ほとんどのマスコミや専門家はトランプ大統領はないと信じ切っていますが、私は今後、テロなど不和に繋がる事件が起きれば一気に勢いを増し、あり得ない大統領の誕生はなくはないと思っています」と指摘しています。

好き、嫌いは別にしてトランプ氏がいつの間にか候補指名獲得までこぎつけたのはなぜか、もう一度考えてみたいと思います。

トランプ氏の特徴は何でしょうか?放言のイメージが強いのですが、そこにとらわれ過ぎると本質を見落とします。彼は二つの圧倒的特徴を持っています。一つは政治家ではなかったこと、二つ目は選挙資金を自己資金で賄ったこと。これ以上の特徴がありますでしょうか?

私はこの二つがトランプ氏をここまで押し上げた最大の原動力だと思います。では、共和党員はなぜこれほど癖がある男にそれでも票を入れたのでしょうか?それは国民の大半が政治に興味を持っていない「どちらつかず」の世論が間接的に影響したとみています。つまり、共和、民主という二大政党に対する不信感が募り、どちらでもない民間人を推してみたいというアメリカ独特のパイオニア精神の現われだとみています。

政治家は地元地区のインタレストを最大限考えます。ところがそれは国が進めたい政策と時として大きくぶつかります。これでは一部地域の選挙民のボイスや政治資金に左右され、正しい国政判断が出来無くなる恐れがあるのですが、これらの悪習慣も政治家は自分たちのオウンワールドとして権利を確保してきたのです。

多くの国民はもっと分かりやすく、かつ、国民全体のインタレストを代表し、しがらみがなるべく少ない人を選んでみたかったという願望がトランプ氏に託した票ではないかと思うのです。

ではクリントン氏はこれに対して盤石か、といえばサンダース氏に対して割と苦戦している状況を見る限り、私は微妙に思えるのです。そしてサンダース氏とトランプ氏は共通の支持層を持っています。それは切り口を従来の右派、左派という主義主張の分け方ではなく、「従前スタイルの擁護派」と「時代に即した変化派」と考えてみると分かりやすいと思います。個人的にはクリントン対トランプとなれば、トランプ氏有利とみています。あくまでも好き嫌いを別にして冷静に考えた上での話です。理由の一つはトランプ氏のスタートはその放言で最悪の評価だったのでそれ以上評価は下がることはなくてもやり方次第で上がることがあるからです。

万が一、トランプ氏が大統領になれば共和党の分裂といったレベルの話ではなく、アメリカの政治基盤そのものを根底から再構築する必要に迫られるとみています。

それは各国の外交もスクラッチからやり直しが求められるかもしれません。トランプ氏の強みはビジネスマンであること、そして何度かの瀕死の重傷を負いながら今の地位を築いたところに「個の圧倒的確立」があるということです。これに立ち向かうには政治家ではなく、ビジネスマンになろうかと思います。

ビジネスマンの基本精神とは何でしょうか?ディールは双方にメリットがあること、そして一部のお仲間たちとウィンウィンの関係を築き上げ、利益をもたらすことであります。この場合のお仲間とはアメリカ国民です。こうやって因数分解するとトランプ氏の思考構造は比較的わかりやすく、攻めどころもつかめると思います。

世界は先進国有利の時代からG20というレベルの均一化が進む時代になってきました。これはかつての上から目線、押さえつけ、強制力が効かず、取引をしなくてはいけない時代になったということではないでしょうか?

ディール巧者、これがトランプ氏が大統領になった時に求められる外交手腕です。勿論、アメリカを除く他国が皆でアメリカにそっぽを向き、アメリカの孤立化作戦を行えば別ですが、残念ながら弱体化したアメリカと言えどもアメリカ抜きに世界が回るほど進化していません。

では日本はどうすべきか、ですが、極端な話、外務大臣(アメリカ担当)を指名し、民間人を起用するのが面白い対策だと思います。そして外交を完全にビジネスディールで責めれば日米関係の新たなる関係を構築できるかもしれません。

今日はかなり「明後日の話」をしていますので一部の読者の皆様からはお叱りを受けるかもしれませんが、今までの常識が通じなかったのだから、我々も常識を捨てるしかない、というフレキビリティは必要なのではないでしょうか?日本がアメリカに無理強いを迫られないように、という気持も込めて書いたつもりです。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 5月6日付より

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。