ウィーン市内で4日夜、北朝鮮の音楽学生に楽譜などを支援する慈善コンサートが開催された。コンサートは非政府機関(NGO)の「世界平和女性連合」のウィーン支部が主催した。
コンサートはウィーンの音楽大学のイザベラ・クラップ教授(Isabella Krapf)のハーモニカ演奏とギター演奏者のカロリ・ベルキ氏のデュエット。休憩を一度入れ、2時間余りの演奏が披露された。
▲ウィーンで開催された北音楽学生支援慈善コンサート(2016年5月4日、ウィーン市内で撮影)
クラップ教授は2011年7月8日から3週間余り、平壌の「クロマティックハーモニカ学校」で15歳から20歳までの約110人の学生たちにハーモニカを教えてきた(「北とウィーンを結ぶ『ハーモニカ』」2012年3月4日参考)。その後、数回訪朝する一方、北から音楽留学生を引き受けるなど、ハーモニカの平和の使者として活躍してきた。
世界最古のハーモニカ製造会社がある独バーデン・ヴュルテン州のトロシンゲン(Trossingen)で2013年10月、国際ハーモニカ協会(WHF、Gerhard Muller会長)主催の第7回世界ハーモニカ祭が開催されたが、そこに参加した北朝鮮の学生たちが大健闘したことはこのコラム欄でも紹介済みだ(「世界ハーモニカ祭で北の学生2位」2013年12月4日)。北の学生たちはクラップ女史の教え子たちだ。彼らは2013年6月、ウィーンに留学し、教授のもとで学んできた。その留学期間の集大成という意味からトロシンゲンの世界ハーモニカ祭に参加し、予想以上の成果を挙げたわけだ。
慈善コンサートの収益金は駐オーストリア北朝鮮大使館を通じて北の音楽学生の支援に使われるという。クラップ女史は、「北では楽譜は貴重品だ。北朝鮮では紙が不足している」と説明していた。
同女史によると、北ではハーモニカが人気が高いという。その理由について、「ハーモニカが他の楽器と比べて安価だという理由もある。その上、ピアノやバイオリンといった楽器と違って珍しさも若者をひきつける要因となっている」と説明している。
ハーモニカは1820年頃、オルガンの調律用として使用され、19世紀半ば、ウィーンで人気を博したという。その楽器が今、平壌で“静かなブーム”を呼んでいるというわけだ。
北朝鮮が核実験、弾道ミサイル発射など行い、国際社会を挑発している最中、北の音楽学生を支援する慈善コンサートが“音楽の都”ウィーンで開かれたわけだ。同会場には北関係者の姿は見られなかった。
クラップ女史は今秋に訪朝する。北の音楽学生のウィーン留学の件などで関係者と話し合う予定という。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2016年5月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。