40、50代は「チャリンチャリン投資家」に転向すべき

老後資金のような長期の資産形成の方法には、「コツコツ投資」と「チャリンチャリン投資」の2つがあります。では40代、50代のシニア世代の人たちはどちらの投資を選択すべきでしょうか?

ちなみに、コツコツ投資とは、低コストのインデックスファンドを組み合わせて毎月積立していく方法です。

一方のチャリンチャリン投資とは、ローンを活用して不動産を購入し、家賃収入で返済しながら資産形成する方法です。

20代、30代なら60歳までに30年、40年といった時間があります。しかし、40歳なら60歳までは20年しかありません。50歳になると65歳まででも15年しかありません。時間という資産が少なくなっているシニア層は、老後資金を作る方法を若年層と変えていかなければならないのです。

具体的に比較してみましょう。

まずチャリンチャリン投資です。

単純化するために、2000万円をフルローンで借入して、2000万円の中古ワンルームを購入するとし、管理費・固定資産税などを除いた利回りを4.5%と仮定します。年間の家賃収入は正味で90万円です。もし、15年の固定ローンを年利1.5%の元利均等返済で借りられるとすれば、上記の表(1000万円借入した場合の金利・返済期間別の元利均等返済金額)で計算すると、元利返済額は毎月12万4148円となります。家賃は月割りで7万5千円ですから、持ち出しは約5万円です(諸経費は考慮していません)。

つまり、毎月5万円を払えば、15年後に現在2000万円のワンルームがローン無しで手に入ることになります。保有期間中のリスクは家賃の下落と空室の可能性です。また、将来手に入る物件価格は築年数が、15年経過しています。

では、この5万円を毎月コツコツ投資したらどうなるでしょうか。「初めての人のための資産運用ガイド」の81ページには、毎月1万円積立した場合の、15年後の資産額が出ています。それを5倍すれば、毎月5万円の場合が計算できます。これは年平均の運用利回りによって随分変わってきます。

年平均1%で運用できると 194万2758円×5=971万3790円
年平均3%で運用できると 227万5401円×5=1137万7005円
年平均5%で運用できると 268万4026円×5=1342万130円
年平均7%で運用できると 318万8112円×5=1594万560円

年平均7%で運用できれば、1600万円近くになりますが、現状の金利環境で年平均7%の運用を15年間ずっと継続できる可能性は残念ながら低いと思います。年平均5%もかなり高いハードルになります。コツコツ投資で毎月5万円積立すると、15年後に手に入るのは1000万円から1200万円というのが現実的な数字でしょう。

単純に比較すると、もしローン期間15年で中古ワンルーム投資をして、同じ条件で貸し続けることができたら、物件価格が20%下がった(1600万円)としても、年平均7%で積立投資するのと将来の資産金額は同じということになります。物件価格が40%(1200万円)に下がったとしても、年平均3%のコツコツ投資と同程度の資産額になるということです。

年平均7%で15年間ずっと運用できる可能性と中古ワンルームが15年で20%以上下がらない可能性はどちらが高いか?
年平均3%で15年間ずっと運用できる可能性と中古ワンルームが15年で40%以上下がらない可能性はどちらが高いか?

仮定によって結果は微妙に変わります。かなり荒っぽい計算ですが、時間が無いけれどの、お金を借りる力のあるシニアはこれからどうすべきか。大きな方向性は見えたと思います。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年5月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。