今週のメルマガの前半部の紹介です。
こんな質問を頂きました。
城さん、先日こういうブログを読みました。
以前に新人の畑違いの配属ネタについて終身雇用の弊害の一つだと書かれてましたが、やはりこうした退職者が出るのも同じ理由からでしょうか?
ただ私の記憶だと富士通は10年ほど前から成果主義を微調整して軌道に乗せ、NECみたいな同業よりも経営が安定的に推移していたような気がするのですが。このブログが本当ならまたネジが戻っちゃったということでしょうか?
筆者はもう富士通のことはよくわかりませんけど、確かに似たような話は他社の人たちからもちょくちょく耳にします。たいていこんな疑問ですね。
「うちも成果主義にしたのに現場は何にも変わってないんですが」
「我が社も成果型にシフトしようと思ってるけど何をどう変えればいいの?」
「そもそも成果主義って何ですか?」
なぜ成果主義を入れたのに変わりばえしないのか。機能させるにはどこをどう手直しすればよいのか。そして、そもそもソレはいったい何なのか。疑問に感じている人は少なくないはず。というわけで、今回は成果主義について掘り下げてみたいと思います。
良い成果主義、悪い成果主義
成果主義には、良い成果主義と悪い成果主義があります。まずは悪い方の成果主義から説明しましょう。きっと多くの読者は「あーあるある」と思うはず。というか9割以上の日本企業はまず悪い方の成果主義からスタートします。それは、だいたい以下のようなプロセスをたどって形成されることになります。
1.「なかなか業績伸びないなあ。そうだ、人件費抑制しよう!」と誰か偉い人が思いつく
2.とはいえ既に上げてしまった賃金はなかなか下げられないので、これから昇給する若手~中堅にのみ昇給ハードルを高くしようとする
3.そのハードルとして目標管理なんかを持ってきて給与や職位が上がらないことの理由にする
4.権限のある偉い人たちには特に影響ないので、会社全体でみると特に変化はない
「成果主義入れたんですけど何も変わらないんですが」という人の会社は間違いなく↑のパターンですね。そりゃそうですよ、実際に組織を動かすポストの人=もう出世してるから昇給昇格のハードル上がったってあんまり影響ない人ですから。会社的にはたいして変化はありません。
また「目標管理とかぜんぜん意味無しに査定される!」みたいな人も多いですが、それも当然。最初から人件費をいくらに抑えるという目標は決まっているので、頑張ろうが頑張るまいが関係なく低評価要員は必要なわけです。目標管理なんて後付けで説明するためのツールなんで、真に受けて頑張りすぎると精神衛生上よろしくありません。
という具合に、悪い成果主義だとけして組織全体のパフォーマンスが上がるわけではなく、成果評価ツールの導入等で事務コストがひたすら増えるだけで、人件費抑制以外のメリットは正直ほとんどないですね。
では、良い成果主義とはどういうものでしょうか。それは、のっけから悪い方の成果主義とは違う理由でスタートします。
1.組織にイノベーション起こしたい、勤続年数や性別によらず皆が活躍できる制度が欲しいという理由でスタート
2.権限のある人ほど責任も負うべきなので、当然、ポストについている人から導入。数値目標もビシビシいく
3.勤続年数ではなく役割に応じた処遇を与える仕組みに切り替え、どんなポジションの人でも活躍も出世も出来る流動性をキープする
4.組織の運営はもちろん、現場レベルでも活力が生まれ、以前と全く違った職場になる
ほとんどの日本企業は悪い成果主義からスタートし、そこで壁にぶち当たってきちんと課題を分析できた会社が良い成果主義に進化するパターンが主流ですね。といっても、そういう風に方針転換できる会社も多くはないです。
多くは壁にぶち当たった後、後述するように対処療法的な微調整を行うにとどまっています。理由は、結局は本気で誰でも活躍できるようなシステムにしようと思ったら、既に昇給している人たちの既得権にメスを入れるしかなく、なかなか労組がウンと言ってくれないからですね。
そういう意味では良い成果主義は既得権まで含めてどかっと再分配を、悪い成果主義はこれから昇給昇格する人たちの間でだけみみっちく分配をするものだと言えるでしょう。
以降、
自社の“成果主義”のレベルを測定してみよう
なんちゃって成果主義と楽に付き合う方法
編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2016年5月12日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった城氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。