社民党は民進党に絶対合流すべきでない理由

社民党が民進党に合流を打診したという報道が流れ社民党は否定しているが、私は双方にとって馬鹿げた話だと思う。

それで利益を得るのは共産党だけで、ますます、民進党や社民党の政権復帰は難しくなるに決まっている。

世界の先進国での政治地図は、中道右派と中道左派の二大政党が、第一党と第二党に交互になるというのが基本構図だ。イギリス、フランス、ドイツ、アメリカなどみんなそうだ。ヨーロッパでは、そこに入りきらない中小政党がそれなりに存在する。

そのうち、中道左派においては、ヨーロッパでは、イギリスのブレア元首相以来、リベラル・ソーシャリズム(リベラル社会主義)という、市場原理の活用を積極的に肯定しつつ伝統的な社会派的な問題意識も実現していこうという流れが主流だ。

そこでは、外交政策についての大きな違いは、中道右派政党とあるわけではない。

ただ、経済政策については、どの程度まで、経済のグローバリズムのなかで、現実に妥協するかという点で、中道左派政党のなかで足並みが乱れがちだ。

たとえば、フランスでは、一昨日もバルス首相やマクロン経済相がめざす、労働契約の自由化案について、社会党左派が造反したので、政府は、「法案に信任をかける」というフラン憲法の規定を発動した(24時間以内に議員の10%の署名で不信任案を提案し、議員定数の過半数の賛成で可決されなければ法案は成立.署名は2人足らなかった)。

そういう状況を考えると、民進党は現実志向で自民党に代替しうる穏健な中道左派路線で勝負するべきだ。イギリスで党員投票で極左チックなコルビー党首を選んで、労働党の政権復帰は遠のいたと言われている轍を踏むべきでない。

そして、それに対する不満を、ソ連東欧型社会主義から脱していない共産党や、ポピュリスト的な極左とは違った、「健全な左派政党」で受け止めることが必要になる。

民進党のほとんどの国会議員は、共産党の票は欲しいが、共産党の体質が根本的に変わらない限りは、連立政権は無理だといっているようだ。

そうならば、民進党や社民党は、共産党を徹底的に叩いてこれを極少化する努力を払うべきだ(あるいは、イタリアのように中道左派勢力に変身させるかをめざすべきだ)。

ところが、社民党が民進党に合流したら、民進党は左右の対立が激化するし、全体的に左に傾いて現実的でなくなって、政権獲得から外れてしまうだろう。そして、一方で、共産党が社民党の支持層の半分くらいを持って行ってしまうだろう。

となれば、社民党と民進党の合流など、民進党が左派的で万年三分の一野党という旧社会党の再現となり、共産党がそれなりに無視できない勢力を保つという組み合わせになり、自民党政権はかえって安定するだろう。

私が民進党、社民党グループに推奨するのは、民進党は左派を切り捨てて本来の意味でのリベラル政党になり、社民党は民進党の左派の受け皿となったうえで、民進党とは柔軟な態度で政策協定を結んで、選挙協力もすることだ。

なにはともまれ、西欧的民主主義的価値の枠内での左派政党としての社民党が消えるとすれば寂しいことだ。

参考:ドイツでは共産党は非合法だが、旧東独与党の流れを汲む「左派党」が少し議席をもっており、社民党にとっては、目の上のたんこぶ。スペインでは極左のポピュリストであるポデモスが今度の総選挙では、共産党を含む左派連合と連合を組むらしい。