群像の時代

中村 伊知哉
群像の時代
志村一隆さん著「群像の時代」。
スマートテレビ後の世界はどうなる。
日米のテレビをずっと見てきた志村さんが、ソーシャルとスマホで、いよいよテレビ分野も、デバイスも表現も編集もビジネスモデルも、根底から変わる時期が来たことを示します。◯産業革命で馬車が鉄道に変わったが、どちらも行き先があって担ぎ手がいて駅がある。
自動車は時刻表も行き先も自由だ。
スマートテレビまでは馬車から鉄道への変化。
今回は鉄道から自動車への変化だという。→なるほど、映像のモータリゼーションであると。

でも自動車が普及しても鉄道は残りました。
ネットが普及してもテレビは残るのでしょうか、志村さん。

鉄道は安価で大量に輸送するメリットを活かしています。
テレビも一斉に安価に送るというメリットを強化するしかないでしょうか。

放送が低コストの一斉同報を強みにするとしても、音声や映像に限らなくてもいいですよね。
ビッグデータをIPで送り続ける役割、あっていいと思いますが。

◯志村さんは言います。
誰もが写真家になり、映像をアップする状況となった。
表現分野のオープン・イノベーションが確実に起きる。

→初音ミクはその嚆矢なのでしょう。日本から広がる可能性もあるのでは。

◯「JAPAN IN A DAY」は、スマホ映像を含むみんなの8000本の映像をフジテレビが90分に編集し公開した作品。
プロが切り取った情報はなく、編集はプロが行う。
個々の一人称目線を集合させたものが公共空間であり、メディアの役割はそうした記憶の編集だという。

→昨年、民放連のシンポで、志村さんはネット時代に放送局の競争力は「ない」と言い切り、ネット民のクリエイティブを取り入れて本業の放送力をアップしろと言いました。
ネットの力を番組向上に取り込むという本業回帰。
その意味が本書で少しわかりました。

◯タイムワーナーはAOLやケーブルを分離。
NBCはコムキャストに売却。
ニューズは新聞を分離。
メディアは捨て、アナログは切る。
だがこれは成長戦略ではない。
一方、ディズニーが作るキャラクターを軸にしたゲームキットは新コンテンツ戦略だ、と分析。

→アメリカは激流が続いていますね。
ソーシャルとスマホは日本のテレビも変えますかね。
そろそろIoTやAIがテレビをどう変えるか、気になっているんですが、今度そのあたり教えてください、志村さん。

群像の時代 動きはじめたメディアコンテンツ
志村 一隆
ポット出版
2015-05-25

編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2016年5月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。