彼が752日間の(閣僚としては比較的長い)厚労相時代に何をしたかは、いろいろな著書で自画自賛している。特に医師不足を是正するために医学部の定員を増やすなど医療の改革に努力したことは、上氏の書いている通りだ。また批判の強かった後期高齢者医療制度の改善に努力したことなど、医療サービスについては功績がある。
しかし厚労省の最大の懸案である公的年金については、彼は「消えた年金」の話しかしない。医療にかけたあれほどの情熱があれば、完全に破綻している年金会計の赤字を減らす努力ぐらいしてもよさそうだが、そういう形跡はない。医療にしても年金にしても、厚労省の予算を増やす省益にそった意思決定しかしていないのだ。
東京都知事としての彼の実績も同じだ。猪瀬前知事が行政改革をやろうとして労働組合の反発を受けたのに対して、舛添知事は労組にとても評判がいいという。余りある財源を気前よく使うからだ。
要するに、彼の政治手法は官僚のいやがることはしないでみこしに乗ることなのだ。これが封建社会で「殿様」としてうまくやるコツで、官僚の評判もよく、二つの内閣で厚労相をつとめた。いばり散らすばかりで官僚にボイコットされた長妻厚労相よりましだが、結果を出していないという点は同じだ。
政治とカネの問題はわかりやすいのでマスコミが集中するが、問題はこの2年間で、彼が都知事として何をしたかということだ。都の予算は7兆円もあるが、私のような都民はゴミの収集ぐらいしかサービスを受けていない。世田谷区の待機児童率は47%で、日本一だ。オリンピックは開催できるかどうかもあやしくなってきた(しないほうがいいが)。
舛添氏にはいろいろ人格的な批判が多いが、政治家としてちゃんと仕事をすれば弁護の余地もある。最大の問題は、彼が政治家として無能だということだ。騒ぎの発端になった「都市間外交」なんて、都民には何の意味もない。たとえエコノミークラスで行っても、そんな仕事は無駄なのだ。大名旅行しかやることのない知事には、早く辞めていただきたい。