米新規失業保険申請件数は5月14日週に27.8万件と、市場予想の27.5万件を上回った。米5月雇用統計のサンプル週は、2015年2月28日週以来の30万件乗せを視野に入れた前週の29.4万件から減少。ただし、年初来の平均値27.5万件を超えている。1973年11月以来の低水準を更新した4月16日週の24.8万件から、距離を開けたままだ。米労働省は特殊要因を指摘していないが、引き続き30万件割れは63週連続で1973年以来の最長とのコメントを寄せた。4週平均は27万5750件で、前週の26万8250件から増加。1973年以来で最低を示した4月23日週の25万6000件を上回る。
今週は、予想外に30万件乗せに接近も過去と比較すれば低水準。
(作成:My Big Apple NY)
5月7日週までの継続受給者数は215.2万人と、2000年以来の低水準を記録した前週の216.5万人から減少した。被保険者に占める失業者の割合は、13週連続で1.6%だった。
5月7日週の州別動向は、以下の通り。
(増加が顕著だった州)
・ニューヨーク州 1万4494人増(前週の3桁増を超える大幅増加)
→輸送・倉庫のほか、教育サービス、宿泊・食品サービスで増加
・ペンシルベニア州 3547人増
→建設、宿泊・食品サービス、製造業で増加
・ミシガン州 3278人増(前週に続き3桁の増加)
→管理サービスで増加
・ジョージア州 1555人増
・テキサス州 941人増
(減少が顕著だった州)
・カンザス州 3216人あり
・オハイオ州 2525人減(前週の増加分より約1000人少ない)
・ミズーリ州 1218人減(前週の増加分をほぼ打ち消し)
→製造業、事務、廃棄処理、建設で減少
・テネシー州 952人減
・カリフォルニア州 821人減(前週に続き減少)
バークレイズのジェシー・ヒューウィッツ米エコノミストは、結果を受けて「米5月雇用統計のサンプル週にあたり、4月当該週の24.8万件から3万件も増加した」と指摘した。ただ前月に米新規失業保険申請件数が1973年以来の低水準を記録した半面、米4月雇用統計は期待外れに終わり「整合性があるとは言い難い」。また「4週平均自体は過去のレベルからみて低い水準にあり、離職率も上昇している兆しはみえない」ため、米5月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は堅調に推移すると予想した。
同エコノミストは、通信会社大手ベライゾンのストライキの影響に関し「米労働省はNY州の新規失業保険申請件数の増加の要因として輸送・倉庫、教育サービスなどを挙げた」と説明。通信の文字は挙がっていなかったものの「ベライゾンのストライキにより、就業者数の伸びは2万~4万人押し上げられるだろう」と分析した。
――なお、前週はNY州での公立学校の春休みという特殊要因のほか、同州に本社を置くベライゾンのストライキ要因で急増したとお伝えしました。実際、NY州では4桁増を記録して、いかに押し上げたかが伺えます。もっとも今週は前週から減少したとはいえ市場予想ほどではなく、かつ年初来平均値も小幅とはいえ上回りました。Fedが6月利上げに傾くなか、労働市場が鈍化の兆しを見せてきた可能性がちらつきます。
(カバー写真:Bromford/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年5月20日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。