運転免許合宿のイノベーション!「氷見ソーシャルインターン」 --- 林田 直樹

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初めまして。林田直樹(はやしだなおき)と申します。

今年の3月に大学を卒業し、4月から総務省にて働いています。

 

今回は、井上さんの主催する「地域力おっはークラブ」のご縁で参加することになった、富山県氷見市の運転免許合宿×インターン企画についてご紹介いたします!

 

・運転免許合宿×インターン「氷見ソーシャルインターン」とは

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①   概要

氷見ソーシャルインターンとは、自動車運転免許合宿と平行して、富山県氷見市の「地域」活性に向けた活動に取り組む滞在プログラム。

 

午前中、自動車免許教習所で講義や実技の講習を受けた大学生が、午後には地域の中に出ていき、商店街や農山村、漁港などの人に合い、地域の課題解決に向けた活動に取り組みます。

 

通常2週間ほどで行われる免許合宿を3週間〜1か月の滞在プランとし、地域に飛び出し地域で新しいアクションにチャレンジするパッケージとして、この夏にも参加者を一般に公募して行われる予定となっています。

 

②   富山県氷見市×慶應義塾大学SFC研究所による企画

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(慶應義塾大学の玉村教授。世界中を飛び回る、バイタリティ溢れる方)

氷見市では、昨年5月慶應義塾大学SFC研究所(氷見市社会イノベーション研究室)と覚書を締結、連携して地方創生と持続可能な社会システムの形成に取り組むこととなりました。

 

その一環として行われた同大学生たちによる氷見市訪問・フィールドワークの成果として学生から提案された地方創生アイデアのひとつが「運転免許合宿の機会を捉えたインターンシップ」でした。

 

自治体と大学の連携の一つのモデルとなるかもしれません。

③   地域おこし協力隊とも連携
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(氷見市地域おこし協力隊の藤田智彦さん)

 

アイデアに共感したのは、氷見市地域おこし協力隊、まちづくり・移住定住担当の藤田智彦さん。

 

「インターンを通して氷見を知った学生が、再訪してくれたら1つの成功。こうした機会で氷見市を体験した学生が、どこかのタイミングで「氷見で暮らす」という選択肢を考えてくれるかもしれない。インターン生は未来の氷見市民」と、この取り組みに対する想いを語ります。

 

藤田さんは、慶大生・研究スタッフと協力し、具体案を検討。自動車学校との協力により、試験的な実施が可能となりました。

 

長期滞在すれば宿泊・食事などの生活費がかさむというデメリットがあります。

そこで、インターンシップハウスとして無料の宿泊場所を提供し、インターン生同士が共同で食材等を購入し自炊するスタイルを取り、生活費を抑えるなどの工夫が成されています。私もインターンハウスに1か月滞在しました。

 

学生から見れば、長期休暇を利用して、運転免許合宿が取得でき、かつ費用的な負担は少なく地域に滞在して研修を受けつつ、様々な体験が出来る魅力的なプログラムとなっています。

・きっかけは「地域力おっはークラブ」
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今回の企画に参加したきっかけは、井上さんが主宰する「地域力おっはークラブ」。

地域力おっはークラブとは、地域の現場で活動する方に、その想いや経験、そして知恵をお話しいただき、みんなで共有・交流して、新しい動きを生み出す場。

世界で一番面白い朝を作りたい!という井上さんのもと、個性あふれる面白い方々が集まります。

私も知人から紹介していただき、いつの間にか事務局員として運営に携わっています。

 

①   本川市長の講演
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氷見市の存在を初めて知ったのは、地域力おっはークラブにて、本川市長のお話を伺ったとき。

市長の公約「つぶやきをかたちに」のもと、市民の声が反映された新市役所のお話を中心に伺い、「氷見って面白そうなところだな」と興味関心を持ちました。

 

②   横田浩一さんからのお誘い
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地域力おっはークラブの交流時間にて、横田アソシエイツ代表取締役代表、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授の横田さんに「富山県に氷見市という面白い自治体がある。今度、私も携わっている地方創生戦略会議があるから、来ないか?」

とお誘いいただいたので、本川市長のお話が印象に残っていたこともあり、これは絶好のチャンスだと思い、飛び込んでみることにしました。

東京にて開催された、氷見の方が集まる会にも参加させていただき、イメージを膨らませてから、氷見を訪問。

③   氷見での充実した日々
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(漁業交流館、魚々座)

 

氷見では、豊かな景観、美味しい食事を満喫し、色んな方からたくさんのお話を伺い、充実した日々を過ごしました。

「つぶやきをかたちに」することの難しさ、そしてそれを実現しようと努力する方々の姿を目の当たりにしました。

慶應義塾大学総合政策学部教授の玉村教授による、氷見市社会イノベーション研究室が設置されていることも非常に興味深く、 自動車免許合宿×インターンについても、まだ構想段階でしたが、お話伺いました。

 

④   実験台として1人で飛び込む

卒業前に自動車免許合宿を検討していたところ、氷見の免許合宿×インターンが脳裏をかすめました。

どうせ合宿で2週間地方に滞在することになるなら、何か面白いことをしたい!と思ったのです。

まだ試験実施段階だったため、今回の企画のコーディネーターをなさっている地域おこし協力隊の藤田智彦さんに「一人でも良いから実験台として参加させてほしい」と頼み込み、企画が実現することとなった次第です。

 

・政策提案に向けて
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(脇野谷内地区の1枚)

①   地域社会での取組の課題

今回のゴールは、氷見市に向けて政策提案を行うこと。

最初の1週間は、商業、移住者、農村、漁業などあらゆる場所や人を巡りました。

私が関心を持ったのは、脇野谷内地区でのたんぽぽ会の取組。

 

たんぽぽ会は、月に1度、皆で集まり、一緒にご飯を食べ、楽しくおしゃべりをする会。

地域おこし協力隊、稲垣さんのもと、脇之谷内の食材をふんだん使ったキムチづくりを開始し、販売まで行っています。メディアにも掲載。「皆で集まることが、元気の源になる」とおっしゃっていて、地域のつながりの重要性・可能性を感じました。

しかし一方で、地域社会での取組は高齢者中心で、継続・継承が課題となっているのが現実ということも学びました。

若者は地元よりも大都市圏を見ていることが多く、休日地元で過ごすことは少ないということも高校生へのインタビューを通して分かってきました。

 

そこで、地域で幅広い世代が交流するような取り組みが生まれたらいいのではないかと思ったのですが、「地域のために皆で交流しよう!」と押し付けるのはナンセンス。参加する人が楽しいと感じ、自ずと参加したくなるのが理想だと考えており、頭を悩ませていました。

 

②   映像による世代間交流
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そこで、若者は何に興味を持つのだろうかと思ったところ、頭に浮かんだのが、スマートフォンを用い、写真や動画を用いてSNSで発信すること。

身近なツールであるスマートフォンを用いて取材する形で、地域社会に入り込み、世代を超えた交流を促すとともに、若者の考える力・伝える力を培う仕組みを作ってはどうだろうかと思うようになりました。

若者は、地域を取材する中で、楽しみながらカッコイイ映像やカワイイ映像を取る技術を学ぶことができます。技術が進歩し、スマートフォン1台でハイクオリティな映像が作れる時代が到来した「今」だからこその発案です。

「地域の人と交流しながら、体験し、気づき、表現する」というプロセスを踏んでほしいという想いがありました。各々が考える力・伝える力を培い、世代を超えたつながりがうまれることは、イノベーション、新たな取り組みを生み出すきっかけにもなるのではないかという想いがありました。

映像と聞いてピンと思い浮かんだのが、初めての氷見滞在でお世話になった地域おこし協力隊、映像作家の釜石さん。

 

③   地域おこし協力隊、釜石拓真さんとの協力
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(地域おこし協力隊、映像作家の釜石拓真さん)

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(学童保育での映像づくり教室)

 

早速釜石さんのもとへ出かけ、想いを語ったところ、「映像制作と映像づくり教室をとおして地域づくりに貢献したい」と熱い想いを持っており、奇遇にも既に学童保育で小学生を対象に映像作り教室を行ってらっしゃいました。

「自分を表現するステージ」から「地域の良さを切り取る」ステージに行きたいとちょうど検討なさっていたようで、すっかり意気投合し、中身を共に練ることとなりました。

1か月もあるということで、氷見市中を飛び回り、教育委員会にも相談し、対象・回数など現実的な落としどころを検討。2016年における氷見市の動き(新HP設立、ふるさと教育×ICT事業開始、ICT教育推進(電子黒板、タブレット、デジタル教科書充実))も踏まえました。

自らも脇野谷内地区にて映像試作し、フィードバックを重ねました。
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(後続の大学生、右から徳江君、村田君、石井君。個性的で超優秀なお三方)

氷見ソーシャルインターン後続の優秀な大学生3人とも連携し、スカイプ会議を何回も行い、詳細を詰めていきました。

④   氷見高校「HIMI学」との連携
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(作品上映会の様子。若者が作るからこそ、親・取材先の人・地域住民が注目します。)

 

実際に地元の氷見高校生を巻き込み、映像作り教室を実施。氷見について学ぶ「HIMI学」を受講している18人に参加してもらいました。

「氷見の人、氷見の課題」をテーマに高校生が地域を取材し、90秒程度のショートムービーを作成。氷見ソーシャルインターン後続の大学生3人に協力してもらいました。

「今まで商店街に足を踏み入れたことがなかったけど、今回の取材を通してつながりができたので、また行こうと思う。」「商店街には若者向けの店がない。もっとこうしたらいい。」等の嬉しい反応が返ってきたため、可能性を感じた次第であります。

 

⑤   さらなる連携・発展へ

地域力おっはークラブにてお会いした鈴木賀津彦さんの紹介により、様々なメディア(新聞・雑誌)にも取り上げていただき、同じような志を持つ方ともつなげていただくことができました。

例えば、メディアキャンプの代表を務める高橋弦さん

メディアキャンプとは、大学生が映像を使った発信方法を学ぶための短期集中型合宿。発信力とメディアリテラシーの向上を目的としており、全国各地で開催されています。若くして志を持ってらっしゃる方です。

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企画発案してから知ったのですが、電通の「広告小学校」という社会教育事業にも非常に興味があります。同じくCMづくりによる教育効果を狙っており、東京学芸大学と連携し、メセナアワード2014優秀賞も受賞しています。

今回の提案に関して、実際に回していくというレベルにおいては、まだまだ巻き込みが足りなかったこともあるので、もっと色んな関係者を巻き込み、もっと面白いプロジェクトに出来たらと考えています。 

 

・2度3度再訪できるつながり
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氷見ソーシャルインターンでの一番の財産は、生まれ育った環境と違う地域で、多くの温かさに触れ、2度3度と再訪できるつながりがうまれたこと

1か月を通してコーディネートしていただき、滞在させていただいた地域おこし協力隊の藤田智彦さんには非常に感謝しています。

また、インターン中お世話になった三品夫妻には、政策発表のため再訪した際、温かく受け入れていただき、楽しいひと時を過ごしました。

そして、大学では出会わなかった自分の専門以外の人と出会い、積極的につながることで新たな可能性を感じたことも大きな財産です。

一例をあげるならば、地域おこし協力隊で映像作家の釜石拓真さんに「映像」、「良さを切り取り、伝えること」への熱い思いと、私の「地域」、「教育」に対する熱い思いがぶつかり合って、今回の提案が生まれたのではないかと思っています。

実際、メセナアワード2014優秀賞を受賞した「広告小学校」も、電通の「広告」と東京学芸大学の「教育」が組み合わさることによって発案されています。

 

これからも積極的にいろんな分野の方と繋がっていきたい、つながりを大事にしていきたいと思う所存です。

 

・ぜひ挑戦してみよう
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(釜石さんに撮影してもらいました。海越しの立山連峰。)

自動車運転免許合宿×インターンの最大のメリットは、免許を取りながら、地域にどっぷりと浸かれること。

気持ち次第で色んな可能性を広げることが出来ると思いますので、皆さんもぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか?

もっと知りたい!氷見市

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編集部より:この記事は、鹿児島県長島町副町長、井上貴至氏のブログ 2016年5月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『「長島大陸」地方創生物語~井上貴至の地域づくりは楽しい~』をご覧ください。