発想を変え共感と感動を広げたアーティスト

一冊の本が届きました。『お願いの女王』です。著者はクラウドファンディングで大成功し、120万ドルものCD制作の資金を集め、またTED講演で大反響を呼んだミュージシャン、アマンダ・パーマーさんです。マスコミやネット界隈で騒動となり、生き方そのものに嫌悪を感じさせる人もいれば、生き方そのもので共感を広げる人もいます。この本は「お願い」することから広がる「分かち合う」喜びや心の豊かさ、そんな人生哲学と彼女の生きざまそのものを語った書籍ともいえるのではないでしょうか。いずれにしても一歩を踏み出す勇気を感じさせてくれる一冊です。

 

3年前に行った彼女のTED講演動画は、なんと800万近い再生回数と注目を集めています。

アマンダ・パーマー 「“お願い” するということ」

アマンダ・パーマーは最初からミュージシャンとしてスタートできたわけではありません。大学を卒業後に「2メートル半の花嫁」という名の生きた彫刻を演じるストリート・パフォーマーとして生計を立てることから活動をはじめます。彼女はそんな厳しい体験を通して、お願いすることとはなにか、人と人が触れ合うこと、また分かち合うこととはなにかを学んでいったのです。

 この『お願いの女王』の帯には、なんと私とエッセイスト渡辺由佳里さんの推薦文が載っています。

 なぜ私が帯に推薦文をと疑問に思われる方がほとんどではないでしょうか。依頼を受けた私自身がそう思ったのですから。理由は、編集の方がアマンダ・パーマーについて2013年に書いたブログ記事をご覧になったからでした。書いた理由は、音楽ビジネスがどう変わっていくか、いや音楽ビジネスだけでなく、マーケティングが立ち返るべき原点を予感させるエッセンスが彼女のなかにあったからです。

これまでの音楽ビジネスは、「どうやって売るか」、「どうやって音楽に金を出させるか」であったのに対して、パーマさんは、「どうしたら人々がお金を出したくなるか」、「どうしたら人々は音楽のためにお金を出してくれるのか」に発想や活動の焦点を変えることで音楽活動を続けられることを証明したのです。

 なにかこの発想の転換は、「マーケティングは売ることではない、マーケティングは、売れる仕組みをつくって、顧客を創造することだ」というマーケティングの原点を感じさせます。

インターネットがアーティストをファンのもとに降臨させる :

 ぜひTEDの講演をご覧になり、この本を手に取られれば、「お願いすること」と「たかる」ことがどう違うのか、また「お願いする」ことから広がっていく人の輪がいかに豊かな人生体験を生み出してくれるのかが心に染みていくのではないかと思います。