朝、PCを立ち上げてニュース検索を始めたら、面白いタイトルが目に飛び込んできた。FTが “Trump puts fossil fuels at US energy core” (May 26, 2016 11:16pm) と題して報じているニュースだ。
一読してみると、シェールオイル州とでもいうべき北ダコタにおける発言で、同州のシェールオイル事業のパイオニアであるHarold Hamm(Continental ResourceのCEOで、2014年に永年連れ添った妻に10億ドル近くを支払って離婚したことでも有名)のアドバイスを入れて行ったものだそうだ。ほとんどの政策において共和党主流派とは一線を画しているトランプだが、このエネルギー政策だけは産業優先の共和党政策そのものといえる。
いわく
・(気候変動対策としてアメリカを含む全世界の196の国と地域が調印した)昨年のパリ協定はキャンセルしたい
・(国有地での水圧破砕を禁じた)連邦規制は元に戻す
・弱体化した石油産業を復興させる
・(長いあいだ議会でも討議されており、最近ではオバマ大統領が反対したため宙に浮いているカナダからの原油輸送のための)キーストーンXIパイプライン建設を促進する
トランプらしく、オバマ大統領やヒラリー・クリントンら民主党のエネルギー・環境政策を批判し、そんなことをしたら「再び中東に油乞いをすることになる」と主張している。素人受けする発言だ。
FTは、いくつか関係者のコメントを紹介している。
前エネルギー省次官で今は投資銀行にいるBill Whiteがいう「水圧破砕と石炭の両方を支援するのは矛盾している」「ガス増産を後押ししてきたClean Air Actをあと戻りさせて石炭産業を後押しさせるのか」という指摘は重要だろう。
シエラクラブのMichael Brune事務局長が「環境を破壊させる」と激しく非難するのは予想とおりだ。
石油ガス業界の望ましい政策を後押ししてくれていると認識しているアメリカ石油協会(API)が「エネルギーが大統領選の争点になることは望ましいことだ」としながらも「トランプを大統領候補としては支持しない」と発言しているのも興味深いところだ。
はてさてアメリカ国民は、11月にどのような判断を下すのだろうか。
編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年5月27日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。