法改正「仮想通貨になりました」

福田 峰之

3年前、ビットコインの取引所であったマウントコックスが、顧客から預かっていたビットコインをインターネット上で盗まれた、所謂「マウントコックス事件」が生じた。当時、ビットコインは通貨なのか、物なのか、テクノロジーの進化に法律が追いついていないこともあり、対応に混乱をきたしていました。自民党においても、どの政策部門で取り上げるのか、決めきれていなかったのです。

当時より、「新たなチャレンジが新たな経済をつくる」という思いで、IT分野を牽引していた自民党IT戦略特命委員会は、マウントコックス事件を引き受けると同時に、ビットコイン、ブロックチェーン等のまだ、確立されていない新たな事業分野も担当することにしました。特命委員会事務局長である僕は、まずビットコインとは何なのか、それを生み出すテクノロジーとしてのブロックチェーンとは、何なのか、学ぶ事から始めました。

ビットコインを知るためにBC関係者のオフ会に参加したり、ビットコインを生み出すマイニング現場を視察するために長崎に行ったり、研究者からヒアリングを行ったりしました。その上で、自民党IT戦略特命委員会の中に「資金決済小委員会」という新たな委員会を設置して、ビットコイン、ブロックチェーンの議論を開始したのです。

当時は、ビットコイン等の法的位置付けが、明確でなかったこともあり、各省庁とも自らが背負い、対応していくことについては、及び腰だったのです。想像もつかない新たなテクノロジー、新たなサービスが、生じた時の対応策は、正に政治が決めるべきものです。小委員会では、ビットコイン等をお金でも、物でもない、「価値記録」と新たな概念を作り出し、既存の法律に当てはまらないことを確認し、業界団体を組織化し、自主的ガイドラインを設けて、信頼と市場獲得を目指す方針を打ち出したのです。これに、呼応し事業者は「日本価値記録事業者協会」を立ち上げ、ビットコインと貨幣との交換所に関するガイドラインを自民党の方針に則ってつくったのです。

それは、資金の分別管理、口座開設時の本人確認、取引履歴の管理と必要時の当局への提供等です。この内容は、今回の法改正の基本となるものです。このガイドラインを守り、ビットコイン交換所の運営を企業は行っていたのです。しかし、FATF(Fainabcial Action Force on Money Launddering)と呼ばれるマネーロンダリング対策、テロ資金対策を行う国際機関から、ビットコイン等の取引所の規制は、ガイドラインでなく法律で定めなくてはいけないと指摘され、5月25日の参議院本会議において、資金決済法の改正が行なわれました。

法改正によって、仮想通貨を定義し、ビットコイン等の仮想通貨と実際の通貨を交換する事業を営む企業を登録制にし、金融庁が監督官庁になりました。今までガイドラインとしてやってきた分別管理、本人確認、履歴保管等が基本となり、資本規制が加わって法律事項になってのです。監督官庁が決まり、法律で定められたことにより、事業の信頼性が高まることになりました。市場を更に広げ、経済活性化につながるものと信じています。

ビットコイン等の仮想通貨は、ブロックチェーンというテクノロジーで成り立っています。ブロックチェーンというテクノロジーは、仮想通貨以外にも、応用が可能で、分散型のデータベースとして、様々な利用が考えられます。新たな経済をつくる先導役になって欲しいと思います。また、法改正が行われたことにより「日本価値記録事業者協会」は、「日本ブロックチェーン協会」に名称が変更され、仮想通貨以外のビジネスの振興にも力を入れることになりました。


編集部より;この記事は衆議院議員、福田峰之氏(自由民主党神奈川県第8選挙区=横浜市青葉区・緑区=支部長、前内閣府大臣補佐官)のブログ 2016年5月27日の記事を転載しました。オリジナル記事をお読みになりたい方は、ふくだ峰之の活動日記をご覧ください。